コロナ第6波に備える最新知識

新型コロナ感染で「ウイルス糖尿病」を発症する可能性も

気になる人は近所のクリニックなどで血糖値を測ってもらおう
気になる人は近所のクリニックなどで血糖値を測ってもらおう(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナに感染した人は糖尿病を発症する恐れがある。こんな研究論文が注目されているのをご存じだろうか。

 米スタンフォード大学の微生物学者であるピーター・ジャクソン教授の研究で、5月18日付の学術誌「Cell Metabolism」に掲載された。

 新型コロナウイルスがインスリンを産生する膵臓の細胞に感染し、破壊する可能性があるという。

 インスリンは血液中を流れるブドウ糖が肝臓や脂肪細胞などに取り込まれるよう促し、炭水化物、タンパク質、脂肪の代謝を調整する働きを持つ。その製造元の膵臓が破壊されるということは、血液中にブドウ糖があふれて糖尿病になるということだ。

 新型コロナに感染して重症化しやすいタイプとして、がん、慢性腎臓病、肥満、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などのほか、2型糖尿病の人が挙げられている。

 ならばその逆に“新型コロナに感染すると糖尿病を発症するのではないか”との推測が、感染が流行した当初からささやかれていた。ジャクソン教授は昨年、10万人が予期せぬ形で糖尿病を発症したのではないか、と推測しているという。

 実際、インスリンの絶対量が不足する1型糖尿病は感染症によって起こることは昔から医療関係者の間で知られていて、ウイルス糖尿病は日本糖尿病学会でも認定され、保険病名にもなっている。

 1型糖尿病の20%、その亜流である劇症1型糖尿病の70%は感染症が原因ではないかといわれている。

「そもそもウイルスと糖尿病の研究は半世紀以上の長い歴史があり、多くのウイルスが糖尿病に関わっていると考えられています。例えばコクサッキーB群ウイルス、風疹ウイルス、A型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、ロタウイルスなどが糖尿病の発症と関わりがあるとされ、新型コロナウイルスもまたその関連が疑われているのです」(弘邦医院の林雅之院長)

 イタリアからも、糖尿病の既往歴のない患者551人のうち、46%が新たに高血糖症を発症したという研究結果が報告されている。

■8割が無症状だからこそ血糖値を測りたい

 大規模調査が行われていない今は、ウイルスによる糖尿病発症はマレかもしれない。しかし、発症までいかなくても新型コロナウイルスの感染が膵臓にダメージを与えた可能性は考えられる。

 気になるのはウイルス糖尿病は、別段太っていなくても発症すること。新型コロナ感染症の8割は軽症か無症状とされ、世界中に新型コロナ感染症が蔓延したことを考えれば、知らず知らずのうちに新型コロナに感染し、膵臓になんらかの損傷を受けていたとしても不思議はない。

 新型コロナ感染症の後遺症として倦怠感を訴える人がいるが、それは血糖値の急上昇が関係しているかもしれないのだ。

 ならばどうするのか。可能なら医療機関で血糖値を測ってもらうのがいいだろう。

「不要不急の外出の自粛が求められていたこともあり運動不足や巣ごもりによるストレスで過食となり太った人もおられるでしょう。その意味からも一度近所のクリニックなどで血液検査をしてもらい血糖値を測ってもらうといいかもしれません」(林雅之院長)

 わざわざクリニックに行くのは気が進まない、という人は薬局などに設置されている「ゆびさきセルフ測定室」を利用するのもいいかもしれない。指先から採ったわずかな血液を分析することでHbA1c(過去1~2カ月の平均的な血糖値)や中性脂肪、肝機能を測定できる。

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