新型コロナワクチン副反応データ分析

AZ社製を接種した日本人536人を調査 重篤例も因果関係は否定

英アストラゼネカ社製のワクチン
英アストラゼネカ社製のワクチン(C)ロイター

 5月21日に特例承認され、8月3日から接種が始まったアストラゼネカ社製の新型コロナワクチン「バキスゼブリア筋注」(以下アストラゼネカ社製)。日本ではアレルギーなどでmRNAワクチン(ファイザー社ワクチン、モデルナ社ワクチン)を接種できない人、海外などで1回接種済みの人などを除き40歳以上への接種が原則となっている。原因は海外で接種後に若者の心筋炎が数多く報告されているからだ。

 しかし、日本で3回目接種がスタートすると、今まで通りmRNAワクチンが安定供給される保証はなく、アストラゼネカ社製のワクチン接種者数が増える可能性がある。日本人が接種した場合の副反応データはどうか?

「新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)」の「健康観察日誌集計の中間報告(15)」では10月18日時点までに国内の8医療機関でアストラゼネカ社製ワクチンを接種した日本人536人が副反応を調べるコホート研究(仮説として考えられる要因を持つ集団『曝露群』と持たない集団『非曝露群』を追跡し、両群の疾病の罹患率または死亡率を比較する方法)に登録した。

 対象となった接種者の年齢は20代60人、30代96人、40代162人、50代151人、60代53人、70代11人、80代以上3人。性別は男性317人、女性219人。そのうち治療中疾患は高血圧34人、脂質異常症15人、糖尿病16人、気管支ぜんそく5人、アトピー性皮膚炎12人、その他86人、疾患なし400人。既往症は気管支ぜんそく55人、悪性腫瘍17人、新型コロナ9人、いずれもなし455人だった。

 この中から1回目接種後1週間までの日誌が回収できた430人を調べたところ、37.5度以上の発熱は接種後1週間では50.9%に見られた。接種当日に10%、2日目45%以上となったもののその後は減少した。

■発熱は20代で80%以上

 年齢別に見ると、若い世代ほど発熱が多かった。20代では男女ともに80%以上に見られる一方で、60代以上の男性は20%程度と20代の4分の1程度にとどまった。

 痛みは接種当日で25%を超え、2日目の65%超を頂点に徐々に治まったが、接種後7日目でも10%以上の人に残った。

 年齢別では若い人ほど多く、女性より男性に強く見られる傾向にあった。局所発赤は接種後2日後をピークに14.7%に見られたが、接種後1週間でも5%程度は残った。

 かゆみは接種から6日目がピークだった。

 全身反応である倦怠感、頭痛、鼻水はいずれも2日目に多く表れ、倦怠感の場合は60%を超えた。

 年齢別に見ると、倦怠感の割合は若い人ほど多く、20代、30代は90%近くとなった。頭痛は20代女性が多く、その割合は90%近くとなった。

 1回目接種で解熱鎮痛剤を飲んでいた人は25人で、うち2剤以上飲んでいた人は4人に上った。

 薬はアセトアミノフェンとロキソプロフェンが各11人、アスピリン(バファリン含む)5人、イブプロフェンとジクロフェナック各1人だった。新型コロナワクチン接種後の副反応で学校や会社を休む人が多いが、アストラゼネカ社製はどうか。1回目接種後、接種翌日を中心に計99人が病欠した。病休日数は1日70人、2日24人、3日4人、4日1人だった。

 心筋炎などの有害事象は起きていないがコホート研究に登録した中に重篤な有害事象が1件生じている。50歳男性で9月7日に1回目を接種し、9月19日に右側の脳内出血を発症したという。男性に既往歴や服薬歴はなかった。接種翌日に注射部の疼痛があり、38.1度の発熱があったが、翌日には解熱したという。

 この男性は調査実施施設以外に入院、9月25日に家族から連絡があり、担当医師からは「現時点で入院している情報によると、出血性梗塞ではないことから、因果関係は否定できると判断する」ということで、PMDA(医薬品医療機器総合機構)への報告はしていないという。

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