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薬の飲み忘れ防止システム「お薬飲んだ?」 1000億円超の残薬解消へ

薬の飲み忘れ防止システム「お薬飲んだ?」
薬の飲み忘れ防止システム「お薬飲んだ?」/(MEDIOTOLOGY提供)

 医師から処方された薬を患者が飲み残したり、飲み忘れたりして余った薬のことを「残薬」という。薬の飲み忘れは、患者の健康管理に大きな問題を生じ得る。また、厚労省の資料によると、残薬の金額は高齢者だけでも年間約500億円になるとされ、専門家の分析によると1000億円以上の残薬があるともいわれている。

 この残薬の問題を改善しようと、IoT(モノインターネット)を活用した薬の飲み忘れを防止するシステム(製品名「お薬飲んだ?」)が開発された。昨年12月から実証実験が開始され、今年3月からのサービス提供を予定している。

 このシステムは「薬包のIoT化」によって、在宅患者の残薬の防止をサポートする。開発したのはIoTを利用したデジタルヘルスサービスを提供する「MEDIOTOLOGY(メディオトロジー)」(東京都港区)。代表取締役社長の木村雄弘氏は言う。

「薬包のIoT化は、電波を用いてタグのデータを非接触かつ一括で読み書きできる『RFID技術』を活用しています。具体的には、患者さんの自宅に通信機能が付いた専用の『IoTお薬箱』を設置し、その中に薬局で処方されたタグのついた薬包を保管しておきます。そして、服薬時に薬包を取り出すと、自動的に服薬状況が記録され、スマホのアプリなどで確認できる仕組みです」

 RFID技術は、たとえば衣類の在庫管理などに使われている。衣類についたタグにリーダーを当てると、瞬時に在庫状況を把握することができる。「お薬飲んだ?」でいえば、IoTお薬箱がリーダーで管理されている商品が薬包ということになる。その情報がブルートゥースでスマホに送信されるのだ。

 手持ちのアップルウオッチと連携させれば、飲み忘れの通知を受け取ることも可能。これらの情報はサーバーを通してリアルタイムで共有され、薬剤師や離れて暮らしている家族が薬箱の状況を確認することができる。「どの薬がどれくらい残っているかが、どこからでも確認できるので、患者さんにとってメリットは非常に大きいと思います。また、タグには薬の情報が紐づけられているので、安全な服薬管理が可能になります」

 このシステムは薬局が在宅患者に提供するだけではなく、老人ホーム、IoTマンションなどでの活用が期待できる。薬局にもICT(情報通信技術)の活用が進みつつある。

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