過去2年間にわたって、われわれの日常は新型コロナウイルス(Covid-19)によって大きな影響を受けてきた。しかし実際に、Covid-19がどのくらいの脅威だったかを扱った記事は少ない。そこで今回は、過去のデータを基にCovid-19が死亡統計の中で、どの辺りに位置づけられるか検証した。
用いたのは厚生労働省の月次死亡統計(概算値)である。
公表されている最新データは2021年9月のものなので、2020年10月からの1年間の数字を集計した。この期間には、第3波、第4波、第5波が入っており、いままでにCovid-19で亡くなった日本人の約85%が含まれている。
対象期間の全死亡数は143万1983人だった。この期間のCovid-19の死亡数は1万6071人で、全死亡に占める割合は1.12%だった。
■10位までは過去30年ほぼ変わらず
主な死因を多い順に並べてみると、<表>のようになった。
ただし誤嚥性肺炎とアルツハイマー病は月次統計に数字が計上されていないので、2020年(1~12月)の1年間の数字で代用した。
上位を占めるのは、がん、心疾患、老衰など、毎年おなじみの死因ばかりである。実は上位10位までの顔ぶれは、過去30年以上にわたって、多少の入れ替わりはあるにせよほとんど変わっていない。
注目のCovid-19は、ようやく14位に顔を出す。アルツハイマー病には及ばず、大動脈瘤や肝疾患より少なく、ようやく慢性閉塞性肺疾患(COPD)に並ぼうか、といった位置である。下には少し離れて糖尿病があり、パーキンソン病、敗血症などが続いている。
こうして表にすると、大騒ぎした割には死者がかなり少なかったことが改めて実感できる。
もちろん、だからといってCovid-19を軽視してよいと言うつもりはないし、現場で奮闘している医療従事者の方々には感謝の念しかない。
ちなみにインフルエンザだが、2019年の死者は3575人だった。死因順位のつけ方にもよるが、25~30位のグループに入る。「Covid-19はインフルエンザと同じようなもの」と言うにはかなり無理がある。
しかし死因の約1%に過ぎないCovid-19のために、政治や行政がバランスを欠いた決定を下してきたことはなかったか。また大マスコミの報道姿勢に、問題はなかっただろうか。今後さまざまな角度から、検証が行われることを期待したい。
(長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授・永田宏)