片頭痛ですぐ痛み止め…はもっと厄介な頭痛を招く恐れがある

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 片頭痛の患者数は高血圧や糖尿病を上回っており、非常にありふれた病気だ。特に20~40代の女性に多い。

 富士通クリニック内科(頭痛外来)の五十嵐久佳医師らの調査によると、片頭痛で日常生活に支障をきたしている人は74%。一方で、病院を受診したことがない人は69.4%だった。

 これらの結果からは、自己判断で鎮痛薬を飲み、なんとか仕事や家事をこなしている人が少なくないと推察できる。それでリスクが高くなるのが、鎮痛薬の使いすぎで生じる薬物乱用頭痛だ。

「特に女性は、20~40代の性成熟期に薬物乱用頭痛になり、QOL(生活の質)が低下しやすい」(五十嵐医師=以下同)

 片頭痛の割合は10歳以下では男女ともに同じだが、10代以降に女性の患者が増え、患者数は男性の2~4倍。また、妊娠中は片頭痛が改善し、出産後、再び発作に見舞われるようになる。

「片頭痛は女性ホルモンとの関係が深く、月経周期・ホルモン変動と片頭痛の発作回数は相関関係にあります」

 五十嵐医師が20~40代女性2476人に取ったアンケートでは、27%が月経時に頭痛を感じていた。月経に関連して頭痛が起こる20~40代の各年代200人ずつ、計600人の頭痛の特徴を国際的な片頭痛の診断基準で確認したところ、65%に片頭痛の可能性が考えられた。着目すべきは、「月経時の頭痛は片頭痛の可能性あり」となった女性の78%は、「生理痛の一種」と認識していた点だ。

「生理痛だからと諦めて受診していないことが考えられます。しかし月経に関連した片頭痛は、持続時間が長く、痛みが強く、薬が効きにくい。再発しやすく、毎月月経がある人は毎月必ずその痛みに悩まされる」

 片頭痛と月経の関連について本人も周囲も認識不足のため、月経前症候群(PMS)や生理痛として片付けてしまいがち。20~40代は就職、結婚、育児、仕事と家庭の両立、親の介護などが重なり、自分のことに構っていられないという事情もある。頭痛のつらさを紛らわすために、市販の鎮痛薬につい頼ってしまうようになるのだ。

 ある40代女性は10代の頃から頭痛持ち。片側前額部のもやもやした痛みから始まり、ずきんずきんとした痛みに至る。体を動かすとつらく、ひどいときは吐き気を催す。光や音がわずらわしい。典型的な片頭痛発作だが、頭痛専門医を受診することはなかった。

 30代からは月に多くて5日ほど頭痛があり、発作は月経1~2日前から月経中によく起こった。市販薬を早めに飲めば良くなるものの、ひどくなってからは効果がないため、頭痛の予兆を感じるとすぐに鎮痛薬を飲んでいた。

 徐々に頭痛日数が増加し、1年ほど前から1カ月に半分以上は頭痛。最近は毎朝目が覚めると頭痛があり、市販薬が全然効かなくなった。

「私の患者さんの例ですが、こういった片頭痛から薬物乱用頭痛に至るケースは珍しくありません。薬物乱用頭痛がひどくなると治療が困難。一般的な頭痛であれば多くはコントロールでき、片頭痛は新しい治療も登場しています。『とりあえず薬を飲んでやり過ごそう』と思わず、頭痛専門医を受診すべきです」

「いつもの頭痛」であっても、「1週間に2日以上鎮痛薬を飲んでいる」「鎮痛薬が効かなくなった」「頭痛が長引く」「頭痛で困っている」の1つでも該当するなら、受診のタイミングだ。日本頭痛学会ホームページで頭痛専門医を探せる。なお片頭痛の診察の際は、「いつから」「頻度」「どこがどう痛むか」「痛みの時間」「頭痛以外の症状」「頭痛を軽くするもの、悪くするもの」をメモしていくと、診察がスムーズにいきやすい。

■片頭痛とは

 病気の一症状では「ない」慢性的な頭痛。ずきんずきんと脈打つ痛み、動くと痛みが増す、光や音が気になる、吐き気を伴うことがある、などの特徴がある。

関連記事