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自律神経(下)名医が教える3大NGと誰でもできる4つの良い生活習慣

写真はイメージ
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 原因が分からず、頭痛、めまい、動悸、不眠、イライラなど、心身のさまざまな症状が表れる「自律神経失調症」。自分の意思とは無関係に、心臓、呼吸器、消化器などを働かせ、状況に合わせて働き方を調節している自律神経のバランスが崩れることで起こる。

 自律神経には心身を活動的にさせる「交感神経」と、心身を休ませる「副交感神経」の2種類がある。両方の働きがバランスよく協調して働いていればいいが、さまざまな原因で片方の働きばかり高まっていると不健康な状態になる。

 自律神経のバランスが崩れる要因には、精神的ストレス、体内時計の乱れ、ホルモンバランス、天候の変動などが関係する。特にストレスに囲まれて忙しく過ごしている現代人には、交感神経の働きが過剰になっている人が多い。つまり、副交感神経の働きを高める対策が必要になるのだ。

名医が教える!健康寿命を延ばして元気になる知恵 自律神経」(朝日新聞出版)の著者で、「工藤内科」(福岡県みやま市)の工藤孝文院長が言う。

「自律神経を安定させるには、生活習慣も大切です。セルフケアとして、まずは自律神経を不安定にするNG習慣をやめることから始めましょう。その代表が『不規則な生活』『運動不足』『冷えを招く生活』です。これらの習慣が続いていると、いくら良い習慣を心がけても自律神経が乱れやすくなります」

 では、この3大NG習慣を排除した上で、実践してもらいたい自律神経に良い生活習慣をいくつか紹介してもらう。

■「朝日」と「朝食」で体内時計をリセット

 体内時計は、脳の一部と体の器官が連動し、心身の働きを約25時間周期で変化させる仕組みで、自律神経と深く関係している。しかし、地球の周期とは約1時間のズレがあるので、リセットしないまま放置しておくと、体内時計はどんどん後ろにズレてしまう。そのズレが自律神経に影響し、バランスを崩すのだ。

「その体内時計のリセットボタンになるのが、朝起きたら朝日を浴びることと、決まった時間に朝食を取ることです。日光を浴びると睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が止まるので、朝、スッキリ目覚めます。また日光は自律神経を整えるセロトニンの産生を促す効果もあります」

■よく噛んで食べる

 自律神経を整えるセロトニンは、「リズム運動」によって分泌が高まる。噛むことも日常的に行っているリズム運動で、食事のたびに実践できる自律神経の安定法になる。また、よく噛むと唾液の分泌が促され、消化も良くなる。胃腸の働き(副交感神経の働き)が良くなることが、自律神経の安定にもつながる。

「よく噛む目安は1口30回程度です。よく噛むためには、ゴボウ、海藻、野菜など、歯応えのある繊維質の食品を取り入れることも大事です。それと、食事以外でもイライラしたときにガムを噛むと効果的です」

■利き手でない方の手を使ってみる

 脳は大きく右脳と左脳に分けられる。右脳は主にイメージや情感、直感、空間など非言語系の情報処理を行っている。左脳は主に論理、計算、分析など、言語系の情報処理を行っている。

「多くの人は右利きですが、右手を使うと言語系の左脳が刺激されます。自律神経が乱れて思考が堂々巡りになったときは、左手を使うと右脳が活性化して心の安定につながります。左利きの人は、逆に右手を使うと、物事を冷静にとらえられる場合があります」

■イライラを鎮める胸鎖乳突筋もみ

 胸鎖乳突筋とは、首の横を、耳の下から鎖骨まで走っている筋肉。ここには脳と体をつなぐ血管、リンパ管、神経が走っており、ツボも並んでいる。

 ストレスでガチガチに凝ると、脳や自律神経の働きに悪影響を及ぼし、イライラなどが起こりやすくなる。それを解消するもみ方はこうだ。

①首を右にギュッと回したとき、左の耳下から鎖骨に浮かび上がる筋のラインが胸鎖乳突筋。手で触れると、突っ張ったようになっている。

②この筋のラインをしばらくさすった後、筋を指で挟むようにして、やさしくもみほぐす。反対側も同じようにもむ。

 自律神経の不調を訴える人は、交感神経の過緊張で肩甲骨回りが硬くなっていることが多い。「肩の上げ下げ」や「肩回し」なども自律神経の安定につながるという。

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