コロナ第7波に備える最新知識

新規感染者数が増加する「オミクロンの新系統ウイルス」とは?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 5月中旬以降、減少傾向だった新型コロナの新規感染者数が再び増加傾向を見せている。

 前の週と比べた新規感染者数は、先月30日までに東京で1.37倍、大阪1.33倍、島根にいたっては2.92倍に膨れ上がっている。

 原因は何か。専門家が「夜間の繁華街の人流増加」「感染やワクチン接種で得られた免疫の低下」「猛暑による室内活動の増加」などと並び理由に挙げるのが「BA.2.12.1」に代表されるオミクロン株の新しい系統への置き換わりだ。

 東京では5月には「BA.2.12.1」の感染が報告された。6月末には長野、愛知で海外、県外への移動のない人の感染が見つかった。既に市中感染により広範囲で置き換わりが進んでいるとみていい。

 国立感染症研究所が先月3日に発表した「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される新型コロナウイルスの変異株について」(第17報)によると、「令和4年2月頃に全国的にデルタ株からオミクロン株のBA.1系統に置き換わり、その後、さらにオミクロン株のBA.2系統に置き換わり、現在の感染の主流系統となっている」という。

 ここで言う「現在の感染の主流系統」とはオミクロン株の中の、BA.2系統、BA.4系統、BA.5系統を指す。

 世界保健機関(WHO)が「懸念される変異株における監視下の系統」のなかにはBA.2系統の亜流のBA.2.12.1が含まれ、米国では今年4月にBA.2.12.1への置き換わりが急速に進んでいた。

 そもそもBA.2より先に報告されたオミクロン型のBA.1は、それ以前の変異型よりも感染力が強かった。しかしその一方で、感染が主に上気道にとどまっていたため、デルタ型よりも肺へのダメージが少なかった。そのためオミクロン型はデルタ型よりも重症化リスクが低いとされた。

 ならばBA.2の亜流であるBA.2.12.1も感染力が強くても感染によるダメージはBA.2と同じか軽いのではないか。

 BA.2.12.1はスパイクタンパク質(ウイルスが細胞に結合する部分)の変異によってそれ以前の系統よりも速いスピードで広まり、免疫系の抗体を回避する能力も高いとみられている。

 つまり過去の感染もワクチン接種も、この系統の感染を防ぐ効果は低くなる可能性がある。弘邦医院の林雅之院長が言う。

「とはいえ『BA.2.12.1先進国』の欧米の感染状況を見るとこの系統のウイルスは強毒化に向かっているようにも見えません。それでも患者数が増えれば入院患者や死者も増える可能性がある。いま欧米ではBA.2系統とは別のBA.4、BA.5系統の置き換わりが起きており、日本にも本格上陸するでしょう。新型コロナに対してはまだまだ気を緩めてはいけません」

 日本ではただでさえ夏場に体調を崩し秋口に亡くなる人も多い。まして今年は例年以上の猛暑が予想される。そこに新型コロナの新タイプが相次いで登場する。

 パンデミック疲れではしゃぎたい気持ちはわかるが、新型コロナ感染でつらい思いをするのは自分自身。リスクのある場所ではマスク、感染して重症化しやすい人はワクチンなど、各自が自身のリスクに応じた自衛手段をしっかり考えて実行する。後々小人の勇と言われぬようにしたいものだ。

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