アトピー性皮膚炎の新薬が続々登場で、治療はどう変わったか?

続々と新薬が登場
続々と新薬が登場

 アトピー性皮膚炎は近年、新薬が続々と登場。薬の選択肢が増えている。現在の治療について、巣鴨千石皮ふ科の小西真絢院長に聞いた。

 アトピー性皮膚炎の治療のひとつが薬物療法。長らく外用薬が基本で、内服薬は補助療法の位置づけだった。症状のコントロールに大きく関与する外用薬は、ステロイド外用薬とタクロリムス軟膏しかなかった。

 ところが2018年、約10年ぶりの新薬として、全身療法の治療薬、デュピルマブが登場。アトピー性皮膚炎では初の生物学的製剤で、2週間に1回投与の注射剤だ。既存薬で効果不十分な中等症以上の患者が対象。さらに20年、約20年ぶりの外用薬の新薬、デルゴシチニブが登場。細胞内のJAKという酵素の働きを抑え炎症や関節破壊を抑えるJAK阻害剤だ。同年には全身療法の経口JAK阻害剤も登場。21年には2種類の経口JAK阻害剤、今年には作用機序が違う新しいタイプの外用薬と、続々と新薬が登場している。この流れは今後も続く。

「新薬を使った後、『ほかの方も自分みたいに幸せになってほしい』と話す患者さんもいました」

 こう話す小西院長が、注射剤デュピルマブを初めて導入したのは19年4月。長年診ていた男性患者で、真面目に治療に取り組んでいたが、症状が十分に抑えられていなかった。デュピルマブの適応条件に該当していることを男性に説明した。

「男性は顔や頭の症状がひどく、デュピルマブは顔や頭の症状には効きづらいという話があった。その点についても説明すると、『それでもやってみたい』と」

 アトピー性皮膚炎は汗で悪化する。デュピルマブを開始する時「これで症状が良くなったら、GWを楽しく過ごせますね」と会話を交わした。それが現実になった。

■1週間で痒みが引いた

「この患者さんの場合、1週間で痒みが引き、1~2カ月で汗がしみなくなり、アトピー性皮膚炎が悪化するからと諦めていたスポーツを始められるようになった。夜も熟睡できるようになりました。顔や頭は多少赤みがあるものの、腫れぼったさはなくなりました」

 男性は現在もデュピルマブを2週間に1回、自己注射している。コントロールの良い状態が続いている。

 前述の通り、現在治療薬の種類は多い。

「2018年以降、アトピー性皮膚炎の治療は大きく変わりました」

 基本は外用薬の適切な使用だが、外用薬でもステロイド外用薬、タクロリムス軟膏に加え、外用JAK阻害剤など新薬の選択肢がある。

 症状が軽減したら、症状の重症度を測定するTARCの結果も見ながら、薬の量、塗る回数を減らし、スキンケアだけでOKの状態に持っていく(プロアクティブ療法)。再燃の兆候が見られたら、早期に外用薬を用いたり、デュピルマブ(注射)や他の新しい全身療法薬の併用などを検討する。

 一方、外用薬を適切に使っていても効果が不十分であれば、デュピルマブを含む新しい全身療法薬という選択肢がある。「次」の打つ手が非常に限られていた「デュピルマブ登場以前」とは、そこが大きく違うのだ。

「従来薬で良くなる方もいれば、新薬が症状改善の大きな助けになる方もいる。新薬適応の患者さんには、各薬のメリット、デメリットを丁寧に説明し、最終的にご自身に合ったものを選択してもらう。新薬は高額ですが、高額療養費制度を利用すれば少ない負担で続けられる方もいます。とにかく言えるのは、これまでどの薬でも良くならなかった患者さんも、今なら違うかもしれないということ。諦めて治療から遠ざかっていた方はぜひ、アトピー性皮膚炎の治療に力を入れる皮膚科を受診してほしい」

 小西院長は、症状をスコア化することで現状把握ができるPOEMスコアを採用。デュピルマブの場合、投与前、2週間後、4週間後のPOEMスコアは、最重症、重症、中等症いずれも平均スコアが半分以下になるという。効果の可視化が、患者の治療のモチベーションにもつながっている。

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