コロナ第7波に備える最新知識

10歳未満のワクチン接種をどう考えるべきか? 公表データから考察する

10代接種は珍しくなくなったが…(C)共同通信社
10代接種は珍しくなくなったが…(C)共同通信社

 新型コロナウイルスの新規感染者数が連日マスコミを賑わせている。厚労省のホームページによると11日には全国で新たに24万169人が確認された。重症者は前日から34人増えて637人、累計の死者数は前日から214人増えて3万4529人だった。抑制策として政府はワクチン接種を盛んに奨励しているが、悩ましいのは10歳未満の子供たちへの接種だ。どう考えればいいのか? 公衆衛生に詳しい岩室紳也医師に聞いた。

 厚労省がネット上に発表している「データからわかる新型コロナウイルス感染症情報」で調べてみると、8月3~9日の年代別新規陽性者数(週別)の10歳未満は男女合計15万9341人。これは40代(同21万4419人)、30代(同20万5683人)、20代(同19万7148人)、50代(同16万1306人)よりも少ないが、10代(同14万9204人)、60代(同9万6630人)、70代(同6万8488人)、80代(同4万3351人)、90代以上(同1万8679人)よりも多い。

 ただし、そのトレンドといえば6月22~28日(合計1万8284人)、6月29日~7月5日(同2万6995人)、7月6~12日(同5万5968人)、7月13~19日(同8万2696人)、7月20~26日(同15万4150人)と急増したものの、7月27日~8月2日(15万5528人)、8月3~9日と3週連続15万人台で、増加のスピードは落ちている。

「成長過程にある10歳未満の子供たちは新型コロナウイルスが侵入するための受容体が少ない。そのため比較的多くのウイルスに暴露しなければ感染しなかったデルタ株流行期での感染者数はわずかでした。しかし、少ないウイルス量でも感染するオミクロン株流行期では、ワクチン接種もほとんどしていなかった10歳未満の子供の間で新規感染者が増えるのは自然なことです。ただし、急増したということは感染の結果として早く集団免疫を獲得し、他の世代より早く収束する可能性もあります。実際に人口当たりの感染者数は若い世代ではすでにピークを越えています」

■致死率はインフルエンザより低い

 では、この年代の子供たちの累積の死者数はどう変化したのか? それまで7人だったのが、7月20~26日に8人、7月27日~8月2日11人、8月3~9日は13人と増えている。当然、警戒は必要だが、致死率でいえば、8月9日時点でのこの年代の累積陽性者数が195万6183人だったことから、0.0006645%ということになる。単純に全数把握の新型コロナウイルスと比較するのは適切とはいえないが、季節性インフルエンザの致死率は0.01~0.05%といわれ、それよりも低い。 

 ちなみに直近の5歳から11歳のワクチン接種で予防接種法に基づく医療機関からの副反応疑い報告は54件。うち重篤例は14件、推定接種回数133万8473回と報告されている。

「感染者数が増えていることで、この年代のお子さんを持つ親御さんの間でワクチンを打つべきか、否かが話題になります。ワクチンを打てば感染リスクは抑えられるとはいえ、ワクチンだけで集団免疫を得るにはその集団の8割以上が打つ必要があります。その意味では現時点で10歳未満の年代のお子さんが他人を感染させないためにワクチンを打つ必要はないように個人的には思います。もちろん、ワクチンには重症化や亡くなるリスクを抑える効果があるので、そのような目的で打つことを否定はしませんが、この年代の致死率とワクチンの副反応を考慮したうえで、打つか打たないかは各自の状況、判断によると思います」

 今後使用される予定の新しい2価ワクチンについては、データの適切な集積と公開が求められる。

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