「蕁麻疹」治療最前線 非常に効果の高い新薬も登場した

かゆみをなんとかしたい…(写真はイメージ)
かゆみをなんとかしたい…(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 蕁麻疹のかゆみをなんとかしたい──。患者の切なる願いに日々対応している皮膚科医のひとりが、日大板橋病院皮膚科病棟医長の葉山惟大医師だ。蕁麻疹治療の最前線では、どういった治療が行われているのか?

 大学病院という性格上、葉山医師の外来を訪れる患者は、これまで受けた治療では成果が出なかった人が多い。しかし新薬を含めた治療で、重症者も含め、多くの人が改善している。

 蕁麻疹は、症状が6週間以内で治る急性蕁麻疹と、慢性蕁麻疹がある。

「蕁麻疹というと『食物アレルギー?』『ストレス?』と考えられがちですが、蕁麻疹は複数の要因が絡み合って生じるケースが大半。蕁麻疹の7割が原因不明の特発性蕁麻疹で、5割が、症状が6週間以上続く慢性特発性蕁麻疹です」(葉山医師=以下同)

 原因が特定できれば、それを避けることが最大の蕁麻疹対策になる。特にアレルギーによる蕁麻疹の場合、アナフィラキシーショックという命に関わる症状を回避するために、アレルゲンの特定は重要。ただ前述の通り、7割は原因不明だ。

「初診では時間をかけて問診をし、アレルギーが疑われれば原因物質を調べる検査を行います。一方、原因特定が困難と判断すれば検査はせず、薬の治療に進みます」

 原因を特定できる可能性が低いのに、「あれが原因? いや別の?」とさまざまな検査を行うのは、推奨されていない。

 治療は段階的に行われる。第1ステップが、抗ヒスタミン薬。眠気が少ない第2世代抗ヒスタミンを使う。

「2週間程度様子を見て効果が不十分なら、薬の量を増やすか、別の抗ヒスタミン薬に替える、または追加する。これで2週間程度様子を見ます」

■治療の第2ステップで6~7割が改善

 それでも効果不十分なら、抗ヒスタミン薬に、ロイコトリエン拮抗薬、H2拮抗薬(H2ブロッカー)、ジアフェニルスルホンを補助的に用いる。これが第2ステップだ。ロイコトリエン拮抗薬は鼻炎に、H2拮抗薬は胃痛や胃もたれに使われる薬で、蕁麻疹には保険適用外となる。

「『抗ヒスタミン薬倍量+第2ステップ』で6~7割くらいが改善します。これでコントロール不良の患者さんには、第3ステップとして、免疫抑制剤シクロスポリン、経口ステロイド薬、2017年に慢性特発性蕁麻疹に保険適用となった生物学的製剤オマリズマブが選択されます」

 シクロスポリンは保険適用外。経口ステロイド薬は1カ月以内に減量または中止のめどが立たなければ他の治療へ変更を検討となっている。

「私は主にオマリズマブを用います。日本で皮膚免疫アレルギー学会の会員を対象とした調査でも、慢性特発性蕁麻疹で第2ステップでも効果が不十分な患者さんには、オマリズマブを用いている医師が多いとの結果が出ています」

 慢性特発性蕁麻疹の患者を対象にしたイタリアの後ろ向き研究では、難治性患者でオマリズマブを投与した470例のうち、全く効果が見られなかった患者は1割で、9割の患者に効果が見られた。葉山医師の臨床経験でも、同様の割合。また、オマリズマブは月1回の注射薬になるが、3回の投与で6割ほどがコントロール良好になる。

「オマリズマブは非常に効果の高い薬ですが、注射がやや痛いという難点があります。そのせいか、自己注射も認められているものの、ほとんどの患者さんが外来受診で投与しています」

 現在、国内外で蕁麻疹の新たな薬の研究が活発に行われている。オマリズマブとは作用機序が異なる分子標的薬(蕁麻疹の原因となる細胞を直接抑える薬)など、何年か後には、新薬が登場していることが考えられる。

「オマリズマブは高価なため扱っている医療機関があまり多くありません。抗ヒスタミン薬で良くならない蕁麻疹の患者さんは、蕁麻疹を専門に診ている医療機関に相談するといいでしょう」

 なお、治療で成果が出れば、薬は使用量、頻度を医師指導のもと、徐々に減らしていくのが一般的だ。

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