60歳からの健康術

性感染症編(11)サル痘の国内患者数は3人 怖がり過ぎる必要はないが…

サル痘ウイルス(CDC提供・共同)
サル痘ウイルス(CDC提供・共同)

 世界保健機関が国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態だと宣言しようとしたサル痘。性的接触を含む接触感染によるこの病気は60歳以上でも注意が必要だ。しかし、最近は話題に上らないが、どうなっているのか? 「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)の著者で日本性感染症学会の功労会員でもある「プライベートケアクリニック東京」の尾上泰彦院長に話を聞いた。

「国立感染症研究所の感染症発生動向調査(8月29日~9月4日)によると、日本のサル痘の累計患者数は東京2人、千葉1人の計3人です。ただし、これは報告された数であり、もっと多いかもしれません。怖がりすぎるのも問題ですが、軽く考えてもいけません」

 サル痘は、サル痘ウイルスによる急性発疹性疾患で、日本では4類感染症に分類されている。1970年にヒトでの感染が発見され、コンゴ盆地型と西アフリカ型のウイルスが確認されている。前者の死亡率は10%、後者は1%とされている。

「今回は西アフリカ型の流行であり、男性間の性交渉を行う者が多いとされています。しかし、女性の患者もいます。初期のエイズがそうであったように男女間での性的接触での感染もあり、サル痘を特別視するのは間違いだと思います」

 潜伏期は通常6~13日(最大5~21日)で、今回の流行に基づく推計では、中央値は8.5日と報告されている。

 発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの前駆症状が0~5日程度持続。発熱の1~3日後に皮疹が出現。顎下、頚部、鼠径部にリンパ節腫脹が見られる。

「ただし、今回は前駆症状が必ずしも認められない事例が報告されています。また皮疹は顔面から始まり体幹部へと拡大。各皮疹は、原則として紅斑↓丘疹↓水疱↓膿疱↓結痂↓落屑と段階が移行すると報告されています。しかし、これも病変が会陰部・肛門周囲や口腔などの局所に集中しており、全身性の発疹が見られない場合や口腔内や陰部の粘膜疹が先行することもあります」

 気分障害の発症も報告されている。

「隔離の影響かもしれませんが、ナイジェリアの報告では2018年に入院した患者のうち4分の1に不安やうつなどでカウンセリングが必要になったと報告されています」

 英国の報告では、54人の患者のうち36人(67%)が疲労または嗜眠を、31人(57%)が発熱を訴える一方で、10人(18%)は前駆症状は見られなかった。すべての患者が皮膚病変を呈し、そのうち51人(94%)が肛門や性器に病変を有していたという。54人中37人(68%)が複数の皮膚病変を有し、4人(7%)が口腔や咽頭に病変を有していた。リンパ節腫脹を有していたのは54人中30人(55%)であった。

「患者の4人に1人が同時に別の性感染症と診断されていました。ただし、この54人の中に死亡者はいませんでした」

 なお、多くの場合2~4週間症状が持続し自然軽快するが、重症化することもある。

関連記事