コロナ第8波に備える最新知識

そもそもマスクは何を防いでいるのか 着用基準見直しが話題だが…

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 着用しない外国人観光客がいるのに、なぜ日本人だけが律義にマスクをつけているのか? そんな疑問を抱いている人も多いのではないか。

 一応、日本でも部屋内外での脱マスクは認められている。5月に厚労省が発表した基準によると屋内では他者と2メートル以上離れて会話をしない場合はマスクなしでもよいとしている。屋外でも、ランニングや散歩など他者との距離が2メートル以上離れている場合、問題ないとしている。

 政府は今後さらに、マスク着用の基準の見直しを検討するとしている。実際、10月6日の参議院代表質問の答弁で、岸田首相は「科学的な知見に基づき、世界と歩調を合わせた取り組みを進める」と述べている。

 では、マスク着用の科学的意味とは何か? 改めて公衆衛生に詳しい岩室紳也医師に聞いた。

「マスクが防いでいるのは口から出る飛沫の飛散です。それを可能にするのが不織布マスクです。しかし、不織布マスクをしていても、隙間からは水分を含んだ感染力を持つウイルスを含んだエアロゾルは排出されます。一方、吸い込むことに関しては、医療現場で使われているN95マスクと呼ばれる超高性能のマスクを隙間なく密着して使う以外には、空気中を漂っているエアロゾルを完璧にブロックはできません。しかも、N95は呼吸が苦しくなるため連続して数十分使うことすら難しく、一般人が使うものではありません。つまり、マスクを着用する意味は『飛沫を出さないため』ということです。だから、海外では相手に飛沫をかけないエチケットを守れば、マスクを四六時中する意味はないと考えているのだと思います」

■空気の流れとセットで話をすべき

 政府が言う「他者との距離が2メートル以上離れている」場面では、飛沫が他者に届きにくい。ならば日本人も脱マスクOKと考えてもいいのか?

「私はそのように単純化すべきではないと思っています。確かに、2メートル離れていれば前にいる相手に飛沫に含まれたウイルスをうつさないと言えますが、飛沫だけではなく、オミクロン株の感染拡大の要因となったエアロゾルも常に意識して、マスクの着脱を考えるべきだと思います」

 たとえ屋内で他の人と2メートル離れていても、換気扇の前のように空気がむしろ濃縮される風下に人がいる場合は、2メートル以上あっても空気の流れをより確実に確保し、エアロゾルを拡散させ、吸入するウイルス量を減らし、感染リスクを下げる工夫をするべきだし、空気の流れが十分あって静かに話している場所なら、2メートル以内であってもマスクなしでもいいと考えるべきだと岩室医師は言う。

「いまマスクが議論になるのは、3年に及ぶ経験から新型コロナはマスクをしても感染するから意味がないんじゃないか、感染しても重症化するのは基礎疾患のある人や高齢者など限定的な人じゃないのか、との思いを国民が持っているからです。これを無視してはいけないと思います。政府はどういう場所だと危ないかではなく、飛沫とエアロゾルに分けて必要な対応を具体的に示すことが大事だと思います。すなわち、空気の流れと不織布マスクをセットで話を進めることが大切なのではないでしょうか」

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