マスクの着用は効果的な感染対策のひとつだと考えられています。マスクを着用することで、ウイルスが含まれた飛沫の吸入を減らせるだけでなく、ウイルス感染者から発せられる飛沫の拡散も減らせるためです。
新型コロナウイルスについても、マスクの着用と感染リスクの低下を報告した研究データは少なくありません。ただ、これまでに報告されている研究の多くは、個人に対するマスクの有益性というよりは、地域や集団における感染リスクの影響を調査したものでした。
また、新型コロナウイルスワクチンが普及した現在において、マスクの着用にどれほど感染予防効果があるのかについて、一貫した結論は得られていません。そんな中、マスクの着用と新型コロナウイルスの感染リスクの関連を検討した研究論文が、感染対策に関する専門誌に、2022年10月6日付で掲載されました。
この研究では米国のノースカロライナ州に在住している18歳以上の人が対象となりました。対象者のうち、新型コロナウイルスの検査で陽性を報告した3901人と、陽性を報告していない2万7813人が比較され、家族以外の人と交流する際のマスクの着用状況が調査されました。
その結果、デルタ変異株が流行する以前において、マスクを着用しない日が1日以上あった場合、マスクを着用していた場合と比べて、新型コロナウイルスの感染が66%増加しました。この傾向はデルタ変異株流行期でも同様(53%増加)でしたが、オミクロン変異株流行期では16%の増加にとどまりました。
論文著者らは「マスクの着用は新型コロナウイルスの感染リスクを低下させるための重要な方法のひとつであるが、その効果はオミクロン流行期において減弱していた」と結論しています。