若く健康で何の問題もない人の腎臓機能を100点だとすると、腎臓機能が低下して自覚症状が現れる人の腎臓の点数は30点以下です--。
クリニックに来る患者さんによく言う例え話です。
すでに何度かお話ししている通り、腎臓は沈黙の臓器。なんらかの自覚症状が出た時には、腎機能がかなり低下しているということになります。
だからこそ、定期的な健康診断で「見つけること」が何より大事。では、冒頭の「30点以下」になると現れる自覚症状とはどんなものか。その時、体内で腎臓はどんな状態になっているのか。そのあたりをお話ししましょう。
腎機能が30点以下まで低下すると、余分な水分が体外に排出されにくくなります。
そのせいで、毒素や不要なものが体にたまっていきます。また、ビタミンDを作ることができなくなります。
ビタミンDは腸管でのカルシウム吸収を促進し、骨のカルシウムを正常に保つ働きがあるので、すなわち、ビタミンD不足はカルシウム不足につながり、骨がもろくなる骨粗しょう症になる恐れも。
では自覚症状にはどんなものがあるのか。個人差がありますが、むくみや疲れやすさやだるさ、尿量が減る、頻尿、尿の泡立ち(腎臓から異常にタンパクが漏れる病気になると認められる症状)、貧血などの症状が現れる人が多い。
ただ、だるさは、腎機能低下が軽度の場合はあまり起きません。それから、便秘を訴える人もいます。
腎機能の低下に伴い、善玉の腸内細菌の減少や腸管血流の障害が起きて便秘症状が出ることがあります。
よく患者さんから「痛みは出ますか?」と聞かれますが、腎機能が低下しても痛みが出ることは少ないです。ただ、腎臓の感染症である腎盂(じんう)腎炎や尿管結石では痛みが生じることも。
これらは腎臓病とはまた違う病気ではありますが、慢性化すると腎臓機能の低下につながることもあるので注意が必要。なお、腎盂腎炎や尿管結石の場合、診察するのは腎臓内科ではなく泌尿器科になります。上記に挙げた症状に心あたりがある人は、どうか腎臓内科を訪れて血液検査と尿検査を受けてください。お住まいの地域によっては腎臓内科がないという人もいらっしゃるかと思います。その場合、内科でも最低限の検査はできますので、近くの病院を早いうちに受診することを強くおすすめします。