歯痛で正月を台なしにしないために…年末だからこそ「3つのセルフチェック」を

写真はイメージ
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 年末年始は歯にダメージがかかりやすい。仕事の追い込みのストレスで食いしばりや歯ぎしりが増えて歯に物理的負荷がかかりやすいうえ、忘年会・新年会などの暴飲暴食で睡眠中に胃酸が食道から口腔内に広がり歯を溶かしたり、歯磨きに時間をかけられず磨き残しから虫歯や歯周病が進行しやすいからだ。

 そのツケが早ければ正月に現れ、歯の痛みに耐えながら正月を過ごす人が少なくない。行動制限が解除され3年ぶりの自由な正月を楽しむためには何をすべきか?

 自分でできる歯のチェックを自由診療歯科医師で「八重洲歯科クリニック」(東京・京橋)の木村陽介院長に聞いた。

「まずは、飲み物を飲んで歯にしみるか否かを調べましょう。温かい飲み物がしみる場合は要注意です。冷たいものがしみるよりも歯の状態が悪く、虫歯などが進んでいる可能性があります。なるべく早く歯科医院で診てもらった方がいいでしょう」

 歯は歯冠と歯根とに分かれていて、それぞれがいくつかの層が重なってできている。歯冠の外側の硬い丈夫な層がエナメル質でその内側は順に象牙質、歯髄(神経)がある。歯根の外側は歯根膜と呼ばれる層で覆われ、その内側はセメント質、象牙質、歯髄でできている。

■温かい飲み物に歯がしみる

 歯がしみるのは「知覚過敏」「虫歯」「歯周病」の可能性が考えられる。

「知覚過敏は食いしばりや歯ぎしり、過剰な歯磨きなどによって露出した象牙質の表面が剥がれ落ちたときに生じます。痛みは長続きせず、ときどきしみる程度です。ただし放っておくと、歯髄にダメージとなり根管治療の必要が出てきます。この段階なら歯磨き指導や薬による歯のコーティング、歯の根元などえぐれている場所を埋めるなど比較的簡単な治療で痛みを治めることができます」

 虫歯が原因の場合はズキズキと痛み、その痛みは一過性でなく長く続く。温かい飲み物だけでなく、冷たい飲み物、甘い飲み物でもしみる。痛む歯が黒ずんでいたり、歯に穴が開いて見える場合もある。虫歯による痛みは放置すると激しい痛みと共に顔が腫れることもある。

「中高年は虫歯になりやすい要因をたくさん持っているから甘く考えてはいけません。糖尿病や高血圧、花粉症などのアレルギー薬を常用している人はその影響でドライマウスになりやすい。中高年はただでさえ唾液の分泌量が少なくなりがちで、唾液に含まれる虫歯菌を抑える作用や歯を再石灰化して虫歯菌の酸から守る機能が低下しやすいからです」

 中高年のなかには胃液が食道だけでなく、口腔内や耳や鼻まで達する、重度の逆流性食道炎の人も少なくない。そういう人は胃酸でエナメル質が溶かされて虫歯になる場合がある。歯周病が原因で歯茎がやせて歯がしみる場合は痛みが一過性で弱いため自覚しにくいので注意が必要だ。

「ただし、歯肉が腫れたり、歯の周りに膿がたまったり、歯磨きをしたときに血がべったりとついたり、歯がグラグラしたりと、そのサインはいろいろあります。歯周病が増える40代以降は意識してそのサインをキャッチすることが大切です」

 なお、歯周病の治療は自由診療歯科医と違って公的保険が利く一般歯科医では保険制度の関係で治療回数がかかるため、年末は痛みを止めるための投薬治療などの応急処置が中心になる。

■急に歯が白くなり光沢を失った

 歯がしみるわけではないが、ホワイトニングなど特別な治療をしていないのに前歯が部分的に白くなる場合も注意したい。これはホワイトスポットと呼ばれるもので、歯の表面のミネラル分が溶けだして「脱灰」と呼ばれる状態を指す。歯は光沢を失い白くなる。

「放置すれば徐々に歯に穴が開いて本格的な虫歯になる場合もあります。ホワイトスポットには初期の虫歯でなくエナメル質形成不全症と呼ばれる別の病気の場合もありますが、急に歯が白く光沢を失った場合は受診することです」

■口臭が強くなった

 虫歯でも腐敗臭が放たれるが、それはかなり虫歯が進行し、放置した場合。歯周病の場合はそれほど進行していなくても強い臭気を放つことがある。

「歯周病による口臭の原因は歯周病菌が口腔内のタンパク質を分解する過程でメチルメルカプタンと呼ばれるガスを作り出すからです。歯周病が進行して歯と歯茎の境目にある歯周ポケットが深くなると、その周囲に繁殖している菌の活動で悪臭を放ちます」

 また、歯の根元あたりに膿がたまる歯周炎になって歯肉から膿が漏れ出てくるとさらに強烈なにおいを放つ。

 大人の歯は一度失えば二度と生えてこない。正月はもちろん人生100年時代を楽しく過ごすために、少しでも異変があれば歯科医院を受診することだ。

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