お腹が痛い…胃だけではなく「胆道がん」もチェック 受診が遅れる、見つかった時は末期がん

早期診断、早期手術が大事
早期診断、早期手術が大事

 2月は胆道がん啓発月間。日本では胆道がんの罹患率は欧米に比べて高く、死亡数も多い。胆道は、肝臓から十二指腸までの胆汁の通り道の総称だ。胆汁を流す管が胆管で、肝臓の中にあるものが肝内胆管、外にあるものが肝外胆管。

 また、胆汁を一時的にためるのが胆嚢で、十二指腸へとつながる部分が十二指腸乳頭部だ。それぞれにできるがん(胆管がん、胆嚢がん、十二指腸乳頭部がん)をまとめて、胆道がんと呼ぶ。

 製薬会社の「アストラゼネカ」が昨年11月、全国の20歳以上の胆道がん患者203人を対象に行った調査では、診断前の時点で胆道がんについて知らなかった人が全体の8割を占めていた。

「胆道がんの認知度は極めて低い」

 こう話すのは、患者調査を監修した神奈川県立がんセンター総長、古瀬純司医師。認知度の低さは、医療機関への受診の遅れにもつながる。実際、何らかの体調の変化があったにもかかわらず、39%の人が1カ月以上経ってから受診。その最も多い理由が「重大な病気だと思わなかった」だった。

 一般的に胆道がんの5年生存率は20~30%。4割が遠隔転移が認められる状態で見つかるという報告もある。

「遠隔転移=手術不能」であり、根治は不可能。遠隔転移がある場合の1年生存率は、14~16%だ。

「早期診断が非常に大事。早期に見つかり手術でがんを完全に取り切れれば、根治を目指せる」(古瀬医師=以下同)

■ちょっとした不調も見逃さない

 残念ながら、胆道がんは「◎◎◎の症状があれば、胆道がんを疑え」といった、決め手となる症状がない。加えて、早期では自覚症状に乏しい。冒頭の調査では、29%の人が「特に体調の変化はなかった」と答えている。しかし言い換えれば、それ以外の人は体調の変化を感じているということになる。

 体調の変化として、上位3位にあがったのが、「みぞおちや右わき腹に痛みがあった(36%)」「食欲が落ちた(34%)」「体重が減った(33%)」。

 いずれもありふれた症状ゆえに、「そのうち良くなるだろう」「いつものこと」「ストレスや疲れのせい」などと考えてしまいがちだ。

「受診したとして、胃については調べても、胆道までは調べないかもしれません。胃内視鏡検査で問題なかったから大丈夫とはせず、胆道の異常も念頭に置き、検査をしてくれる医療機関を受診した方がいい」

 続いて、「倦怠感があった(26%)」「黄疸がでた(25%)」「便の色が変わった(24%)」。

 黄疸とは、皮膚や白目が黄色くなったり、尿の色が濃くなること。がんで胆汁の通り道が狭くなり、胆汁が胆管から逆流して血管の中に入り、胆汁に含まれる黄色い色素ビリルビンで、黄疸が出る。便の色が変わるのは、胆汁が腸に流れないためだ。白っぽい便になる。

「胆嚢がんでは黄疸はほとんど出ませんが、肝外胆管がんでは早い段階で黄疸が出ます。尿が紅茶のように茶色になっていたら、ためらわずに受診してください」

 胆道がんの確定診断では胆汁の細胞診や病変部の組織生検が用いられる。しかし胆汁細胞診の診断率は40~60%。何度か行ってもがんを証明できないケースがある。胆道がんの治療経験などが少ない医師が、結果が出ないからと細胞診を繰り返していれば、手術ができるタイミングを逃してしまうかもしれない。

 調査では「胆道がんと確定診断されるまで複数の医療機関を受診した」という人が58%いたが、どこを受診すればいいか悩んだ時は、日本肝胆膵外科学会のホームページを利用する手がある。胆道がんは専門医が少ない。HPでは、専門医・指導医や、高度技能施設を探すことができる。

関連記事