痒みが悪化する! アトピー性皮膚炎の「汗対策」4つのポイント

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 アトピー性皮膚炎の患者にとっては、「汗」は不快さだけで済まず、痒みが増す原因になることも。どう対策をすればいいのか。巣鴨千石皮ふ科(東京・豊島区)の小西真絢院長に話を聞いた。

「アトピー性皮膚炎の患者さんが症状がひどいと訴える部位は、季節ごとに変わります」(小西院長=以下同)

 たとえば、春は花粉症の影響で顔が痒くてつらいという患者が増加するが、夏の場合、かいた汗がたまって皮膚同士がくっつきやすい肘の内側、膝の裏、首の痒みが深刻化するという。

 汗対策として最も有効なのは、①水かぬるま湯のシャワーを浴びて汗を洗い流すこと。

「『汗をかいたな』と思ったら、可能であればなるべく早い段階で水かぬるま湯のシャワーをさっと浴びるようにしてください。1日2、3回と複数回にわたっても構いません。ただし、せっけんは使わない。水かお湯で洗い流すだけで十分です。皮脂を過剰に洗い流さないよう、せっけんで体を洗うのは1日1回にしましょう」

 汗を洗い流した後は、②必ず毎回保湿剤を全身に塗る。自分の体に合う、普段から使用しているもので問題ない。

 外出中で、すぐにシャワーを浴びるのが難しい場合は、③アルコールフリーのウエットティッシュで体を軽く拭く。

「赤ちゃんのお尻拭きや、『清浄綿』の名前でドラッグストアなどで販売されている柔らかな綿で、汗をかいた部分をそっと拭いてください」

 よく見かける汗対策のシートは、アルコールが入っているものが多く、しみて痛みを感じてしまう可能性がある。購入する際は、必ずアルコールの有無を確認する。

 アトピー性皮膚炎の患者にとって、④夏の衣類は綿100%の素材がベスト。汗の吸収率が良く、すぐに汗を拭ける状況でなくても、服が汗を吸収し、汗が肌表面にたまることをある程度防いでくれる。

 暑いかもしれないが、長袖、長ズボンの着用を。皮膚炎悪化につながりかねない紫外線を防ぎ、容易に患部をかきづらくなる。子どもの場合、かきむしりを防ぐ効果も期待できる。

■適切な薬物治療も重要

「アトピー性皮膚炎の患者さんにとって、夏に限らず毎日が痒みとの闘い。『どうせステロイドの塗り薬しかないんでしょう』と治療をあきらめている方もいます。しかし、近年新薬が続々登場し、10年ほど前と今では治療がかなり変わってきています」

 まず大前提として「ステロイドは副作用が怖い」というのは全くの誤解だ。適切な使用によるメリットは大きい。しかし、ステロイドが向いていない患者もいる。現在、軽症の患者用ではステロイドではない塗り薬も新たに登場しており、選択肢が増えている。

「ステロイド外用薬と同様、目分量で塗ると効果が薄くなりますので、使用する際には必ず医師から言われた適量を守るようにしましょう」

 中等症以上の場合、塗り薬に注射薬や飲み薬を組み合わせる「全身療法」という選択肢もある。寛解を長期維持するための治療で、保険適用だ。寛解とは、皮膚症状にとらわれず日常生活を送れること。

「現在は12歳からの適応となる薬もありますし、さらに低年齢でも『全身療法』を選択できるようになるのはそう遠い未来ではありません」

 全身療法によって、アトピー性皮膚炎は寛解維持が可能な病気となった。

「当院にも全身療法を行う患者さんが多くいらっしゃいます。みなさん、薄かった皮膚のバリアーが強くなり乾燥が少なくなり、『痒みに悩まされ続ける日々から解放された』と表情や雰囲気まで明るくなる。汗でしみることが少なくなったので、スポーツを始めたと楽しそうに話す方も。そんな患者さんを見られるのは、何よりうれしいですね」

 同じ皮膚科でも、何を得意としているかは違う。現在の治療に満足を得られていない人は、他の治療方法がないか、一度、主治医に相談することをお勧めする。

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