五臓六腑の中で、生殖をつかさどる臓器が腎。不妊症に対して、東洋医学では腎の働きをよくすることが最も重要だと考えられています。
そのため不妊治療には、この腎のパワーダウンを食い止める「補腎」が重要になってきます。
この「補腎」の考え方は、さまざまです。
性欲や精力減退が主症状の場合は「腎精」にアプローチしますし、精神的・肉体的疲労感が主症状の場合は「腎気」、腰や下腹部の冷え、全身の冷えが主症状の場合は「腎陽」、のぼせ、ほてり、寝汗が主症状の場合は「腎陰」にアプローチします。
漢方処方としては、六味地黄丸、八味地黄丸、牛車腎気丸などが知られています。また有効なツボとしては太渓、腎兪、関元、石関などもあります。漢方もツボも、その方の「証」に応じてどれが最適かが異なります。なお「証」とは、その方の見かけ、体質、体力、抵抗力、自覚症状などから導き出されるものになります。
腎を補うとともに、もう一つ大事なのは妊娠を妨げる因子を取り除くことだといえます。それは、ストレスなどにより気の流れが滞る「気滞」、血の流れが滞る「血瘀」、体の中に余分な水分や脂肪がたまってしまう「痰湿」です。
「気滞」には加味逍遙散、柴胡加竜骨牡蛎湯が効果を発揮し、ツボですと太衝、内関などがあります。
また「血瘀」には桂枝茯苓丸、当帰と芍薬散、芎帰調血飲、そしてツボは三陰交、血海などがあります。
そして「痰湿」には柴苓湯、防已黄耆湯、さらにツボでは豊隆、陰陵泉などとなります。
西洋医学で行われる最新の不妊治療(生殖補助医療)に東洋医学療法を加えることで、妊娠し、無事に出産に至った例は数多くあり、また東洋医学療法のみでも体調を整え妊娠に至ったケースも一定数あると報告されています。
子供が欲しいが、なかなか授からない……。そんな場合は、不妊治療の経験のある漢方医や鍼灸師に相談するのも手です。
東洋医学を正しく知って不調改善