帯状疱疹と頭痛は無関係ではないという話を前回しました。今週も引き続き帯状疱疹についてお話ししたいと思います。
「これって帯状疱疹かな?」と疑ったなら、何科を受診しようと考えるでしょうか。おそらく多くの方が皮膚科を訪れるのではないかと思います。
実際、日本では皮膚科に行く人が圧倒的に多いのですが、実は海外では神経疾患であるとの考え方が周知されていることから、脳神経専門の医師が診ることも多い病気。私もこれまで数多くの帯状疱疹の患者さんを診てきました。
前回は片頭痛の予兆として、顔や頭皮がピリピリとする異痛症(アロディニア)が起きる人がいることを話しました。
これらの人の帯状疱疹ウイルスの抗体価を調べてみたことがあります。すると、片頭痛の発作が起こるタイミングで、帯状疱疹ウイルスの抗体価も上昇傾向になっていることが判明。片頭痛発症前は免疫力が低下し、帯状疱疹ウイルスが活性化するせいで、顔面や頭皮がピリピリするアロディニアが起きるとともに片頭痛も悪化していると考えられます。
私の患者さんの40代女性の症例を挙げたいと思います。
この女性はひどい片頭痛持ちで、月に4回ほど、片頭痛治療薬であるトリプタン製剤を服薬していました。そんなある日、左三叉神経第2枝領域に帯状疱疹を発症。患者さんいわく「1週間ほど前から、アロディニアがあり、片頭痛も悪化していました」とのこと。
すぐに抗ウイルス薬を処方し、服用したことで帯状疱疹は改善したのですが……その約3カ月後に帯状疱疹が発症していた側と同じ左の後頭部に、まるで何かに刺されているような強い神経痛が出て、1週間ほど続いたのです。その後、痛みの性質は変わり鈍痛が持続しているとのことで、すぐに来院してもらい頭部MRI検査を行いました。
結果、左椎骨動脈に脳血管解離と脳動脈瘤の形成があることを発見。この女性の場合は経過観察で自然修復・治癒となり私も安心しましたが、このように帯状疱疹と脳血管障害との関連をうかがわせる例はこれまでいくつも診てきました。
これは海外のデータになりますが「顔面に帯状疱疹が出た人は、1年以内に脳卒中を起こす率が高い」という研究結果も出ています。
帯状疱疹を発症した人で、片頭痛持ちの人はできれば脳神経内科・外科に診察に来ていただきたい。ピリピリするなと感じたら、我慢や様子見をせずに、すぐに受診するようにしてください。
なお、「帯状疱疹は一度なったら、もうならない」という都市伝説みたいなものがあるようですが、それは違います。
罹患後の免疫の獲得には個人差があるため、人によっては何度でもかかりますが、一度罹患すると抗体価がしばらくは高い状態となるので、すぐに再発することはありません。免疫持続期間は人それぞれなので油断は禁物です。免疫力を落とさないよう規則正しい生活や十分な睡眠を心掛けましょう。
だからあなたの頭痛は治らない