ワインには老化抑制で注目の「抗糖化作用」がある 同志社女子大薬学部教授が研究結果を発表

ワイン全般に抗糖化作用がある(写真はイメージ)
ワイン全般に抗糖化作用がある(写真はイメージ)

 ワインに抗糖化作用がある──。同志社女子大学薬学部の杉浦伸一教授と酒類専門商社のモトックスが共同研究結果を発表。テーマの臨床研究論文はこれまでになかったという。

「糖化」は、過剰な糖が体内のタンパク質と結びついて タンパク質が劣化し、AGEs(糖化最終生成物)が産生される反応のこと。抗糖化は、細胞が活性酸素で傷つくのを抑制する抗酸化とともに、老化抑制のキーワードとして近年注目を集めている。

「抗糖化作用が強い物質としてポリフェノールが挙げられます。そしてワインにはポリフェノールが多く含まれている。そこでどれくらい抗糖化作用があるかを調べる研究を行いました」

 杉浦教授は日常的に買える値段のワインの中から、スクリーニング検査で抗糖化作用が比較的高いものを選び出した。具体的に血液と似た環境下で糖とタンパク質、ワインなどの試験品を混合し、強制的に糖化反応が進むよう60度で40時間反応。産生されたAGEsの量を定量化した。

 ワインは白、赤を用意。原液、5倍希釈、25倍希釈と濃度も変えた。

 結果はこうだ。「糖+タンパク質」に何も加えなかった場合、AGEs生成率を100%とすると、代表的なAGEs生成抑制剤アミノグアニジンを加えた場合はAGEs生成率が41.1%まで低下。では、ワインを加えたら?

■一部の赤ワインは希釈しても強い作用

「研究で用いた赤ワインの中で最も抗糖化作用が強かったものでは、AGEs生成率は原液でわずか2.9%。5倍希釈では17.8%、25倍希釈では29%でした」

 別の赤ワインのAGEs生成率は原液で3.8%。5倍希釈でも18.3%とアミノグアニジンより下。白ワインは赤ワインよりポリフェノールの含有量が少ないが、原液ではアミノグアニジンより生成率が低く、29.5%だった。

 次に、男女計48人を2つのグループに分け、一方のグループには、先の研究で最も抗糖化作用が強かった赤ワインを1日125ミリリットル、週6日、4週間飲んでもらい、2週間空けた後、同量のミネラルウオーターを週6日、4週間。もう一方のグループは、水↓2週間↓ワインとした。糖化は紫外線、便秘、ストレスなどの影響を受けるので、ワインと水の飲む順番を変えた。研究参加者48人に依頼したのは「ワインまたは水を決まった量、期間飲む」ということだけで、それ以外の生活習慣は変えないようにしてもらった。

「すると研究期間の前半(6月上旬から7月中旬)では、ワイングループではAGEsが減少する傾向が見られました。水グループではAGEsが上昇しました」

 紫外線が強い後半(7月下旬から9月中旬)では、水とワインとのグループで差はなかった。ただし、一般的に女性は男性より紫外線対策に熱心。そこで女性だけに限ると、ワインを飲んだグループでは有意にAGEsが減少した。

 また、正常便と便秘のグループの比較では、正常便でAGEsが減少する傾向が見られた。さらに交感神経が有意に活性したグループ(=ストレスグループ)ではAGEsの変化はなかったが、正常グループではワイン摂取でAGEsが減少する傾向が見られた。

「これらの結果から言えるのは、ワイン全般に抗糖化作用があり、特に一部の赤ワインでは希釈しても高い効果を得られるということ。しかし、紫外線、便秘、ストレスといった糖化を促進する因子があると、ワインの抗糖化作用は弱まる可能性があるということです」

 ワインは品種、生産地、生産年の気候、造り手、醸造期間など、条件で味わいも変わるが、抗糖化作用の強さも変わる。今後は各ワインの抗糖化作用を調べ、それが一定基準を超えるものについては、消費者に伝えられるようにしていきたいと、杉浦教授は話す。

 なお、抗糖化作用があるからといって飲みすぎてはアルコールによる害の方が大きくなる。研究結果は、あくまでも1日125ミリリットル(ワイングラス1杯程度)によるものだということをお忘れなく。またブドウジュースに関しては、素材は同じでも糖分があり、過剰な糖分摂取(糖化を促進)になりかねない。

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