ひどい腰痛も8割治る

仕事柄、常に腰へ負荷が…若い頃から繰り返すぎっくり腰、なんとかならないのか?

画像検査では「異常なし」となることが少なくない
画像検査では「異常なし」となることが少なくない

「11月ごろから腰の痛みがあったんです。そして翌年の5月、追突事故に遭ってしまい、歩くのに支障が出るぐらいまで悪化しました」とぎっくり腰の痛みに耐えかね、我々のクリニックを訪れたのは40代の男性患者さん。

 腰が突然痛み出すこのぎっくり腰は、医学的には「急性腰痛」といいます。

 筋肉や背骨回りの軟骨、椎間板のトラブルなどが関係していることは推測できても、レントゲンなどの画像検査では「異常なし」となることが少なくありません。

 そのため積極的な治療に至らず、一時的に痛み止めなどで痛みを緩和し様子を見るというのが一般的です。それでもだいたい1カ月以内で自然に治癒するのですが、この方の場合は少し違っていました。

 仕事は配送業。重い荷物を運搬し、日常的に腰に負荷がかかっている。さらには、関節リウマチと気管支喘息の持病があり、炎症物質を体内で多く産生することから、健常者と比べて炎症や痛みが引きにくいことも考えられます。

 話を伺うと、この男性は28歳の時に初めてぎっくり腰を起こして以来、コルセットを装着し落ち着いたら外すを繰り返し、なんとかやり過ごしてきたのですが、これまでに4~5回は非常に重いぎっくり腰を起こしていたとのこと。そして突然、冒頭にもあるように追突事故に遭い、腰痛を悪化させてしまったのです。

 最初に受診した近所の整形外科では、外科的な治療は行わず、電気治療、牽引、投薬など患者さん自身の治癒力にそった保存的加療が行われたそう。しかし歩行時はもちろん、食事やトイレの時、車や自転車の運転時といった座っている時も痛みが出て、一層状況が悪化してしまいました。

 さっそく診察を行うと、若年時から繰り返してきたぎっくり腰は、椎間板にひび割れがあり、椎間板ヘルニアを繰り返していたことが原因と考えられました。そこに交通事故で腰に大きな負担がかかり、歩行困難にまで悪化。診断結果は、椎間板ヘルニアと椎間板変性症となりました。

 特定した椎間板の患部である計5カ所に、直接損傷を修復するゲルを注入するセルゲル法の治療を実施。術後の診察では座位や立位、ならびに歩行などに問題はなく、その日に帰宅してもらいました。

「整体にも通うようになってさらに良くなったので、日常生活を過ごせるようになりました。でもどうしても長時間の歩きの後や座っていると痛くなることがあります」

 治療から1カ月後には痛みはなくなり、日常生活は、ほぼ送れるレベルに。3カ月後には仕事復帰のめどが立ち、治療の効果を患者さん自身も実感していただけるほどに回復しました。

 1年たった現在では、前出の持病により腰が痛いこともあるが、へルニアについての症状はないとのこと。

 単なるぎっくり腰であっても、この患者さんのように複雑な病態が影響している場合があり、そんな原因をより詳細に追究することは、これからの腰痛治療ではますます求められることでしょう。

(ILC国際腰痛クリニック東京・簑輪忠明院長)

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