ひどい腰痛も8割治る

検査で異常なし…なのに寝返りが打てないくらい痛みが増してきた

レントゲン撮影のみでは診断は難しい
レントゲン撮影のみでは診断は難しい

「10~15年前に荷物を持って中腰作業をしている時、左側の腰辺りが徐々に痛くなってきて、それが3日間くらい続いたんで、家の近所の整形外科で診てもらったんです。でも、特に異常なしって言われて。いままでだましだましで過ごしていたら、最近急に寝返りもできないくらいに痛くなって、今度は整形外科には行かないでマッサージを受けてみたんですけど……」

 当院に駆け込んで来られたのは長年腰痛を患う40代の男性の方。

 早速あおむけの状態で行う、ラセーグ徴候検査を行いました。ラセーグ徴候とは、臀部の筋の収縮により、座骨神経が圧迫されることによって起こる徴候を指しますが、この検査では特に座骨神経障害の鑑別に用いられます。

 具体的なやり方は、患者さんの脚を伸ばしたまま持ち上げます。大腿後面に痛みがあり、それ以上に脚を上げることができなくなった場合、その状態をラセーグ徴候陽性と判断し、椎間板ヘルニアなどを疑います。ちなみにこの方はラセーグ徴候は右がわずかに陽性との診断結果でした。

 MRI検査で詳しく調べると、椎間板に1カ所ヘルニアを見つけました。ゲルをその部分にポイント的に注入するセルゲル法による日帰り施術を行いました。

 術後数日の経過は、痛みは消えたものの右足のしびれがまだ残るとのこと。引き続きの経過観察で、およそ1カ月後にはしびれがだいぶ軽減していました。

 さらに半年後、しびれの状態は変わりません。今後はひょっとしたらしびれについては残る可能性を説明した上で、過ごし方として、安静にするのではなく逆に、日常的に歩行をするなどの軽い運動を心がけるようにすることもお伝えしました。これは運動により筋肉をつけることなどで、症状改善につながるためです。

「朝起きた時に少ししびれた感じはありますが、おかげさまで体を動かして活動すると薄らいでいく感じです」

 1年後となる今では症状は安定している様子で、引き続き入浴や入浴後のストレッチ、貧乏ゆすり(これに関しては、また詳しく取り上げます)など、体を動かすことをお勧めしました。

 長年にわたり腰痛で悩まれている方の中で、レントゲン撮影は受けたが、MRIはまだという方が少なくありません。

 実はレントゲン撮影のみでは、椎間板ヘルニアを正確に診断することは非常に難しいのです。それゆえに異常なしと診断され、原因不明の腰痛として何の治療も行われない。結果として、我慢しながら腰痛を抱えて生活をするというケースが珍しくありませんでした。

 ですが、近年はMRIなどの検査機器の発達により、以前より腰痛の原因の発見が容易になりました。もし撮られたことがない方は、もう一度MRI検査をお勧めします。

(ILC国際腰痛クリニック東京・簑輪忠明院長)

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