「何年も痛みを我慢してきたんです。でもとうとうずっと立ってられなくなって、坂道も歩けない」
といって我々のクリニックを訪ねて来られたのは、韓国から来日し長らく日本に定住されている40歳代の女性の方でした。
伺うと20歳代のころに首を痛め、原因不明のままやり過ごしてこられたのですが、ちょうど7年前のこと、今度は左下肢に痛みが出始めたことから、自宅近くの整形外科を受診。エックス線撮影検査の後、腰が悪いとの診断となりましたが、根本的な治療は行われず、湿布など保存的加療にとどまったまま、ここにきて立つこともままならず、当院を受診されたのでした。
さっそく前屈後屈やあおむけになってもらい、医師が脚を持って上げ下げすると、座骨神経痛や椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などさまざまな可能性が考えられるラセーグ徴候(臀部の筋の収縮で、座骨神経が圧迫されることによって起こる徴候)も見受けられました。
そこで改めてMRI検査なども行い総合的に診断した結果は、椎間板の水分量が減り硬くなり、本来の機能であるクッション機能が損なわれ発症する椎間板変性となりました。
椎間板の組織(セル)をジェル状のゲルによって修復するセルゲル治療を実施。
施術を終え1週間後では何の変化もなく、歩くことが困難な状態は変わらなかったため、早期の効果を期待した患者さんにとっては不満となる結果となりました。
ですがそんな状態も3カ月を経過した時には改善され、たまに荷物を持っている時に痛みが出るものの、以前のような立つことも支障がある状況よりは改善されました。
さらに半年後には家事や重たいものを持つと腰が痛くなることはありながら、より改善されているようでした、ただ患者さん自身が無理のないレベルの歩行やストレッチを行い、血流を促すようにすること。椎間板以外の腰痛の要因についての可能性も引き続き探ることを繰り返し伝えました。
今回の症例のように腰痛の原因は単純なものとは限りませんし、1週間の短期間では良い効果は出ないことの方が多いものです。
診察時によく、気長に待ちましょうとお話しさせてもらっていますが、セルゲル法にしても、時間をかけて椎間板を徐々に修復していく治療だということを認識していただければと思います。そのためにも早期に腰痛の原因と患部の状態を把握することはなによりも重要だといえるのです。
(ILC国際腰痛クリニック東京・簑輪忠明院長)
ひどい腰痛も8割治る