シーズン真っ只中…肌トラブルを引き起こす「花粉皮膚炎」に注意

皮膚のバリア機能を維持する
皮膚のバリア機能を維持する

 花粉症のシーズンがピークを迎えている。日本人の2人に1人が罹患している花粉症は、鼻炎や目のかゆみの症状が一般的だが、近年、肌のかゆみや痛み、瞼の腫れといった皮膚トラブルを起こすことが知られつつある。「成増駅前かわい皮膚科」院長の河合徹氏に聞いた。

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 花粉症で生じる鼻水やくしゃみ、目のかゆみは、大気中を飛散するスギ花粉が鼻の粘膜や目の角膜に付着することで引き起こされる。ただ、花粉は皮膚にも付着する。

「皮膚に花粉が付着すると免疫細胞が働いて排除しようと炎症が起こり、湿疹やかゆみ、ヒリヒリとした痛みの症状が現れます。とりわけアトピー性皮膚炎や乾燥肌の人の場合、皮膚のバリアー機能が低下して表面に傷ができやすく、そこから体内に花粉が侵入しやすい。悪化すると瞼が赤く腫れたり、人によっては顔全体に散らばるように赤みやむくみが出現するケースもあります。顔や首など、花粉に触れやすい部位に湿疹ができるのが特徴です」

 アトピー性皮膚炎でなくても、花粉が多く飛ぶ地域で長く生活している人や、屋外での仕事に従事していると、花粉を浴びる頻度が高く花粉皮膚炎を起こしやすい。

 ある40代の女性は、首の湿疹と瞼の腫れで皮膚科を受診。問診で花粉症があるかを聞かれ、20年前から鼻水や目のかゆみがあり、年々悪化していることを伝えた。湿疹が首と顔に限定されている点から、アレルギー検査を行うとスギ花粉がアレルゲンとして認められ、花粉皮膚炎と診断された。

「治療は一般的な花粉症の症状と同様に抗ヒスタミン薬の内服や、皮膚の炎症に対してはステロイド外用薬を処方します。1週間~10日塗布すると湿疹は治まりますが、内服や保湿剤だけだと症状が再発しやすい方には、湿疹の予防効果のある塗り薬も使用します。ステロイド外用薬を予防目的で塗り続けるのは、皮膚が薄くなって逆に赤みが残りやすくなるためおすすめできません」

 副作用のリスクからステロイド外用薬の使用に抵抗がある人も少なくないが、湿疹は中途半端な治療で長引かせるよりも、適切な強さのステロイド外用薬を使用し、速やかに症状を取る方がむしろ副作用が起こる頻度も低くなるという。ステロイド外用薬の副作用が心配であれば、皮膚科専門医に相談するといい。

■スキンケアを徹底する

 ただ、花粉症の罹患歴が長く症状が強い場合には、予防的な治療を行っても完全に湿疹を予防するのが難しいという。日常生活で花粉に触れる頻度を減らす対策が大切だ。

「花粉を家の中に持ち込まないよう、花粉が多い日は部屋の換気を避け、花粉飛散情報を参考に空気を入れ替えるタイミングを決めてください。外出から帰宅したら上着は屋外か玄関ではたき、可能であれば玄関にハンガーラックを設置してそこに掛け、部屋に持ち込まないようにするか、開閉する頻度が少ない特定のスペースに収納するなど、花粉と接触する機会を減らしましょう」

 洗濯物の外干しにも注意したい。花粉は濡れた衣類に付着しやすく、それを身に着けると本来、花粉皮膚炎が起こる顔や首だけでなく腹部や太ももに湿疹ができてかゆみが生じやすい。室内干しを徹底し、皮膚に付着しないように心掛けたい。

 また、先述した通り皮膚のバリア機能が低下すると皮膚内部に花粉が侵入しやすい。普段スキンケアをしない人も、花粉の時期は化粧水やクリームを塗り保湿ケアを行うといい。

 気を付けたいのが、花粉皮膚炎と似た症状が現れる重大な疾患があることだ。自己判断で対処していると命を落とす危険性もあるという。

「膠原病のひとつの皮膚筋炎は特徴的な症状に瞼が赤く腫れ上がる『ヘリオトロープ疹』が見られます。花粉皮膚炎だと思い込んで診断が遅れると、がんや間質性肺炎を引き起こして最悪のケースでは死に至ります」

 花粉皮膚炎だと妄信せず、症状があれば早期に皮膚科専門医を受診することだ。

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