お尻がしびれる「梨状筋症候群」は2つのストレッチで予防する

体幹と骨盤の安定化と股関節外転筋の強化エクササイズ
体幹と骨盤の安定化と股関節外転筋の強化エクササイズ(C)日刊ゲンダイ

 お尻に電流が走ったようなピリピリした痛みやしびれがある──。そんな症状で悩んでいたら「梨状筋症候群」(りじょうきんしょうこぐん)かもしれない。とりわけ長時間座りっぱなしの人は注意が必要だという。「整形外科スポーツ・栄養クリニック」理事長で、ピラティス指導者でもある武田淳也氏に聞いた。

 梨状筋は、骨盤(仙骨)から大腿骨にかけてのびる薄い紡錘状の筋肉で、その下には腰から足裏へとつながる太い座骨神経が通っている。何らかの原因により梨状筋が座骨神経を圧迫し、お尻や太ももに痛みやしびれが生じるのが梨状筋症候群だ。

「デスクワーカーや長距離ドライバーなど、長時間座りっぱなしの状態が続くと梨状筋の弾力が失われ硬くなり座骨神経を圧迫します。またバレエダンスやゴルフなど、股関節をねじる運動を繰り返すと梨状筋が引っ張られたり、筋が肥大化して座骨神経を圧迫させやすくなる。若い女性に多い『反り腰』も、骨盤が前傾して梨状筋の圧迫を受けやすくなるので注意が必要です」

 ある40代の女性は、約3カ月前からお尻や太ももの裏側にかけての痛みやしびれに悩まされていた。普段から通っているフィットネスクラブのインストラクターに相談すると、梨状筋症候群かもしれないとストレッチポールを用いた梨状筋のストレッチを勧められて自宅で毎日行うように。しかし、日が経つにつれて逆に症状が悪化し、整形外科を受診した。

「近年、梨状筋症候群にはマッサージが効果的といった情報が広まり、とにかくほぐせばいいと、フィットネスクラブなどで患部のマッサージなどを勧める講師も少なくない。しかし、ストレッチポールなどを使ってやり過ぎると、座骨神経がダメージを受けて炎症を起こします。悪化すると痛みやしびれが増し、下肢の感覚が鈍くなったり筋力が低下する恐れがあります」

 梨状筋症候群の明確な診断基準はまだ確立されておらず、診断に難渋するケースも少なくない。お尻に痛みがあれば梨状筋を触診し、圧痛点の有無を確認する。また座骨神経痛は腰部脊柱管狭窄症や腰部椎間板ヘルニアによっても引き起こされるので、鑑別するためにもMRI検査を行う必要がある。

「痛みに対しては消炎鎮痛剤の内服薬や外用薬の処方をはじめ、超音波を用いた物理療法が基本ですが、近年、整形外科医の中でも効果が高いと使用されているのが『ハイドロリリース』です。これは超音波画像から梨状筋と座骨神経の癒着部を確認し、そこに直接生理食塩水を注射で注入して癒着を剥がし、筋肉の動きを改善させ痛みやしびれを解消させる方法です。患部に直接注入するので即効性が高いとされ、ほとんどの方は改善します。それでも、癒着や炎症がひどく痛みが続くようなら、ステロイド注射や場合によっては手術も検討されます」

 梨状筋症候群は梨状筋が硬くなることにより発症する。悪化させないためにも、日頃のストレッチや股関節まわりのエクササイズが大切だという。

■梨状筋のセルフストレッチ

 椅子に軽く腰かけた状態で、片側の足首を反対側の膝の上に置き、そのまま上半身を前に倒し10秒間キープする。反対側も同様に行う。

■体幹と骨盤の安定化と股関節外転筋の強化エクササイズ(写真)

 横向き寝になり、下側の手の上に頭を乗せ、上側の手は体の前にセットする。その状態で両膝を90度に曲げ、上側の足を骨盤の高さまで上げる。常に骨盤が動かないように心がけて、息を吸いながら、膝の角度を変えずにゆっくりと前後に5~6回動かす。反対側も同様に行う。

「痛みがひどいときに行うと、かえって症状を悪化させる可能性もあるので、無理のない範囲で行うようにしてください」

関連記事