朝晩2回でリスクを把握 「血圧」は家庭でこそしっかり測る

 5年ぶりに改訂される日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2014」の最終案がまとまった。さまざまな研究データを盛り込んだ改訂版では、〈家庭血圧〉が09年版以上に重視されている。

 家庭血圧とは、〈自宅で測定される血圧値〉のこと。最近は血圧計を常備している家庭が増えたこともあり、ガイドラインでは〈家庭と病院での測定値が違った時は家庭血圧を優先すること〉という指針も打ち出されている。

 なぜ、家庭血圧が重要なのか。「正林医院」(東京・大田区)の正林浩高院長は言う。

「血圧が高いまま放置すると血管の老化現象=動脈硬化を進め、脳卒中や心筋梗塞などのリスクが高まります。しかし、高血圧は自覚症状に乏しいので患者さんはなかなか診察に来ません。病院で血圧を測定するのは月1回程度という人がほとんどです。血圧は深呼吸した程度で下がるなど、さまざまな要因で変動するもの。それを月1回の測定で把握するのは難しいのです」

 自宅で朝晩2回測定すれば、月60回になる。月1回の通院時に測定した場合と比べて情報量は60倍だから、それだけ正確な血圧を把握することができる。

 また、家庭で測定した時は正常値なのに、医者や看護師の前では緊張して血圧が上がる〈白衣高血圧〉タイプや、病院で測定した時は問題なくても、自宅で測ると数値が高い〈仮面高血圧〉の人もいる。月1回の測定では、こうした隠れた高血圧が見落とされる可能性があるのだ。

「脳卒中や心筋梗塞といった〈心血管イベント〉の発症は、夜間の血圧の値が大きく関係していることが多くの疫学調査から分かっています。クルマのエンジンは動かしっぱなしだとすぐに故障してしまいます。人間の心臓も同じで、夜間はしっかり休めなければいけません。通常なら、夜間の血圧は昼間の値から10~20ぐらい下がるものです。しかし、夜になっても下がらなかったり、寝ている間の方がむしろ高い人もいる。危険なのはこうしたタイプです」

 夜間の血圧が高いかどうかの判断材料になるのが、夜寝る前の〈夜間血圧〉や、朝起きた時の〈早朝血圧〉だ。これは家庭でなければなかなか測れない。

 家庭血圧の測定は命を救う。正しい血圧の測り方をしっかり覚えておきたい。

「1日2回、朝起きた時と、夜寝る前に測り、手帳などに記録しておきましょう。起床後、トイレを我慢したまま測定すると数値が変化してしまうので、済ませた後に測ってください。夜はお酒を飲んだ後だろうが、お風呂に入った後だろうが、布団に入る直前に測ればOKです」(正林院長) 患者の中には、良好な数値が出るまで何度も測る人が少なくないという。1度の測定につき1回測れば十分。何度も測った時は、平均ではなく測った回数分の値をすべて記録しておく。血圧の変化やバラつきを把握することが重要なのだ。

「測定する時の姿勢は、上半身を起こしてください。寝転んだ状態で測ると数値が変動してしまいます。椅子に座ったままでも、あぐらをかきながらでも問題ありません」(正林院長)

 病院では「140/90㎜Hg以上」だが、家庭なら「135/85㎜Hg以上」が高血圧の診断基準になる。

 自宅で測定した数値が気になる場合は、診察を受けた方がいい。
 血圧は病院よりも家庭で測ってこそ、より有効に活用できるようになる。

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