50代以上の半数がかかる「前立腺肥大症」は手術で治る

「昼夜トイレに立つ回数が多くて困る」「オシッコに勢いがなく、した後もスッキリしない」――そんな中高年は前立腺肥大症を疑った方がいい。万一、病院でそう診断されたとしても心配ない。今は体にやさしく、費用も安い手術法がある。

 前立腺とは膀胱(ぼうこう)の下で尿道と2本の射精管を取り巻く位置にある、栗の実大の臓器。排尿と射精に関わる働きがある。
 加齢などで前立腺の細胞数が多くなって肥大し、尿道や膀胱などを圧迫するのが前立腺肥大症だ。日本の潜在的患者数は400万人、50代以上の2人に1人がこの病気だといわれている。

「国際的な診断基準では1日8回以上トイレに立つ、夜中に2回以上オシッコに行く、残尿感がある、尿漏れなどの症状がある場合をいいます。あまりの頻尿に“面倒だ”と尿意を我慢すると、トイレに行っても尿が出なくなる“閉尿”に苦しむことになります」(都内の泌尿器科医)

■体への負担が少ないHoLEP手術

 その治療法は薬を含めさまざまあるが、確実に排尿障害の改善が期待できるのは手術。なかでもオススメは尿道から内視鏡を挿し入れ、レーザーで肥大部分を丸ごとくりぬいて取り除く、「HoLEP(ホーレップ=ホルミウムレーザー前立腺術)」だ。年間100例以上の前立腺肥大手術を行う、聖路加国際病院泌尿器科の遠藤文康副医長が言う。

「膀胱結石などを合併している、前立腺がんがある、などの場合は大掛かりな開腹手術になりますが、最初に検討するのはこの手術法です。日本では2000年前半に導入され、果物の実を皮からはがすように切除します。取り残しが少ないのが特徴です。いま最も普及している、電気メスで何度も切除するTURP(経尿道的前立腺切除術)に比べ出血が少なく、100グラムを超える大きな肥大にも対応できます」

 しかも、再発率がTURPに比べて半分程度だという。

■射精機能を残す方法も

 その効果はテキメンだ。ある60代の男性Aさんは前立腺肥大による典型的な頻尿で、夜間は3回以上、昼間は1時間おきにトイレに立つため、寝不足に陥り、仕事にも支障が出ていた。

 ところがHoLEP手術を受けた後、頻尿はピタリと止まり、700ミリリットルあった残尿(膀胱にたまっていた尿)が放出されてゼロに。体全体のむくみも取れ、体重も1週間で1.5キロ程度痩せた。

「手術前は尿漏れもひどく、トイレに立つたびに下着を濡らしていましたが、手術後はそれもなくなりました。長時間の会議でも尿意がなく安心です。体がむくんでいたせいか、階段で息切れすることもありましたが、それもなくなりました」(Aさん)

 最近は、こうしたメリットが広く浸透し、多くの医療機関でHoLEP手術が行われている。

「ただし、この手術はある程度の技量が必要です。例えば、切除した前立腺は膀胱で粉砕、それを吸引しますが、その際、膀胱を傷つける可能性もあります。週1回、年間50例以上のHoLEP手術をこなしている医師は手術時間が短く、出血も少ない傾向にあります。しかも、射精機能を残す方法を模索している医師もいるので、気になる人は相談するといいでしょう」(遠藤副医長)

 体への負担が少ないHoLEP手術は比較的入院日数が少なく、結果として治療費が安くなる。

 頻尿は手術で治る。覚えておこう。

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