医療ライターが体験 「がん治療」後悔しない3つのポイント

 医療ライターの佐々木真理さん(47歳)は、2012年7月に乳がんが見つかり、翌13年4月に手術を受けるまでに、納得のいく医療を求め、3つの病院、8人の医師を受診した。「がんといえばネガティブなイメージを持たれることが多いが、信頼できる主治医と二人三脚で治療に臨めたら不安も少なく希望を持てる」と話す佐々木氏に、経験から得た「がん治療で後悔しないポイント」をインタビューした。

 私は家系にがん患者がひとりもいなかったため、がん宣告を受けた時はショックが大きすぎ、自分に合う病院、医師を積極的に探そうという気持ちは、少しも湧いてこなかったんです。

 ところが出会った医師が、あまりにコミュニケーション能力に欠けていた。なぜその治療が必要なのかを聞いても、ろくに答えが返ってこない。

 私の場合、検査時に針を動脈に誤って刺され、乳房が腫れ上がるという経験もしたのですが、担当医らは「医療ミス」とは認めず、「ケガ」程度の軽い認識でした。
 患者のためではなく、すべて医師の都合で物事が進んでいるようにしか思えませんでした。大げさではなく、「このままでは医師に殺される」というほどの恐怖を感じ、自ら主治医を探さなくてはと行動に出たのです。

 結果的に信頼できる医師に出会え、納得のいく医療を受けられたのですが、だれもががんになる可能性のある時代、ぜひ皆さんに知っていただきたいことは次の3つです。

 まず、「信頼できる医師に会えるまで探し続ける。駄目と思ったら、次、次と進む」です。
 早期のがんはオペ終了後は治療もなく定期検診のみになりますが、再発や転移のリスクを想定するという意味では、健康な体づくりを目指す“長期戦”になります。「がんを取ったら終わり」と捉えず、どんなことでも相談でき、真摯に応えてくれる主治医を見つけることが特に大事なのです。

 次に、「信頼する人を通して情報を得る」です。インターネットからは、がんの治療法やいい病院・医師などについて、さまざまな情報が得られます。しかし、あまりに多すぎ、真偽の判断も難しく、かえって惑わされると私は思いました。

 ただし、口コミは非常に重要。私は信頼できる友人や知人にがんの経験者を紹介してもらい、がんと付き合っていく上での参考にしました。
 ちなみに、がんの手術で3週間入院したのですが、同室の患者さんたちとも仲良くなり、今でも情報交換をしています。

 さらに、「医師に説明を求める時は作戦を練る。できれば第三者同伴で」です。医師探しの中で私が強く感じたのは「なぜがん治療は、外科医が主治医なのか」ということ。外科医は切った張ったが好きな人種。とにかく手術がしたいのです。そんな彼らは、手術の必要性を説明する能力に欠け、前述のように、コミュニケーション能力が不十分。ダイレクトに質問しても、通り一遍の返事しかない。

 だから私は、病理検査をもとに、可能な限り数値などの客観的要素を示した回答になるよう、医師との面談の前には質問を幾通りも用意しました。その答えをメモし、分からないことがあれば調べ、それでも疑問があれば再度質問する。メモを取る自信がなければ、ICレコーダーなどで録音するのも手です。

 患者がいてこそ、医師の存在価値がある。不信感を抱いているのに医師の言いなりになったり、「ま、いいか」と諦める弱者にだけはならないように積極的に動くべきなのです。

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