認知症を早期発見する「脳萎縮解析検査」のスゴさ

 65歳以上の高齢者のうち、認知症の人は推計15%。認知症になる可能性がある軽度認知障害の人を含めると、65歳以上の4人に1人が認知症とその予備群だということになる(厚労省調べ)。自分や、あるいは自分の老親の物忘れの多さから、「もしかして…」と漠然と不安に思っている人がいるのではないか?

 最近は、アルツハイマーをはじめとする早期の認知症をチェックできる検査が登場している。これで一度調べてみるのも手だ。

 新百合ケ丘総合病院(川崎市)の笹沼仁一院長(脳神経外科医)に話を聞いた。

■従来の方法では見逃されることも

 認知症が疑われる時、認知機能を調べるテスト(認知機能検査)がまず行われる。
「これは認知機能や記憶力を簡単に測定できる11項目からなる検査ですが、明らかに症状が出ている人は別にして、社会生活を普通に送っているような人では、正常範囲の点数になることが少なくありません」

 そこで役立つのが、認知機能検査に比べて手軽に受けられ、認知症のリスクをチェックできる検査「脳萎縮解析検査」だ。
 これは、MRIの画像を専用のソフトウエアで処理する検査で、脳の萎縮の有無を判定できる。同年代の標準的な脳のデータと、検査を受けた人のデータを比較し、萎縮の程度を0~3の数値で表示する。

 アルツハイマーで、最初から出てくる症状である認知機能や記憶障害は、脳の一部である海馬が萎縮することで生じる。

「これまではMRIの画像を専門家が目で見て読影していたのが、脳萎縮解析検査を使えば、標準的な脳と検査を受けた人の脳の違いが数値で一目瞭然です。もちろん、最終的に脳神経外科医がチェックして判断する必要がありますが、脳萎縮解析検査によって、医師の読影だけでは難しかった早期の認知症リスクを発見できるようになったと思います」

 数値で2を超えると、認知症の疑いが強いとみなされ、冒頭で紹介した認知機能検査が行われる。

 ちなみに、脳の機能に影響は出ていないが、飲酒量が多い人は前頭葉に萎縮が見られることが多いという。

 脳萎縮解析検査は、人間ドックや脳ドックの一部に組み込まれていたり、オプションとして追加できる場合が多い。どうせ高いお金を出して受けるなら、上手に役立てたい。笹沼院長が強調するのは、認知症は老化現象によって起こるものではなく、生活習慣病の成れの果てと考えるべきだということだ。

「動脈硬化が進んでいる人は、脳血管障害などを起こしやすく、当然ながら、それによる認知症のリスクは高くなります。糖尿病が悪化している人は、やはり認知機能が低下しやすい。脳の萎縮だけを気にするのではなく、トータルで、認知症予備群かどうかを調べた方がいい」

■40代で一度受けるといいい

 認知症は「完治」はできないが、早期発見・早期治療によって、進行を遅らせることができる。自分の脳の現状を知ることで、予防にも役立てられる。
 事実、脳萎縮解析検査をきっかけに、認知症予防のために、適度な運動を心掛けたり、食生活を改善したりするなどして、動脈硬化対策に努めるようになる人は少なくないという。

「40代で一度受けることをお勧めします。異常なしなら次は5年後で問題ないでしょう」

関連記事