従来方法は古い 糖尿病と診断されたら受けるべき最新検査

「残念ながら糖尿病です」
 主治医にそう告げられたら、あなたはどうするだろうか? 血糖値をコントロールするための薬を飲み始める? 食事制限をする?あるいは運動を始める? むろん、これらも必要なことだが、まずやるべきことは、死に至る合併症から身を守る、最新検査だ!

 佐藤直子さん(仮名、74歳)が糖尿病と診断されたのは5年前。以降、腎臓の検査や目の検査などと共に胸部・腹部のCT検査、脳のMRI検査、心臓CTなど、少しお金のかかる検査を定期的に受けるよう心がけているという。糖尿病専門医で佐藤さんの主治医でもある、AGE牧田クリニックの牧田善二院長が言う。

「糖尿病の男性は10年、女性は13年も短命です。それだけ、糖尿病は命に関わる病気なのです」

 糖尿病というと、手足の壊死(えし)につながる神経障害、失明につながる網膜症、腎症といった3大合併障害が有名だ。しかし、いずれも薬や手術技術の進歩により、血糖値に関係なく、治る道筋が開かれつつある。

「そんな中、糖尿病で今一番怖い合併症は“がん”です。日本人の死因1位であるうえ、糖尿病の人はそのリスクが非常に高いからです。九州大学の研究では、普通の人に比べて3.7倍もがん発症リスクが高いとされています」

 実際、「糖尿病とがん」については国内外から同様の報告が複数なされ、日本がん学会と日本糖尿病学会が合同で専門家委員会を設けるほど問題視されているのだ。

「糖尿病が怖いのはがんだけではありません。米国では糖尿病患者の実に7割が脳梗塞、心筋梗塞により亡くなります。日本でも脳梗塞になった人の半分、心筋梗塞になった人の3分の1が糖尿病だという報告もあります。また、糖尿病の人は脳の一部が萎縮し、認知症になりやすいことも明らかになっています」

■患者が心臓CTを受けたところ15%に重大問題

 本来、こうした病気は自覚症状があるものだが、糖尿病患者は神経が障害され、自覚できないケースが少なくない。
「ですから、糖尿病と診断されたら、患者さんはがんや心臓のためのCT検査、脳梗塞や認知症発見のためのMRI検査を受けることが必要なのです。私はそれをすべての糖尿病の患者さんに勧めています」

 その効果は抜群で、AGE牧田クリニックでは糖尿病患者のうち毎年10人に肺、15人に胃や大腸にがんが発見されるそうだが、亡くなった人はいないという。

 また、同クリニックの糖尿病患者800人が心臓CTを受けたところ、なんと15%の患者に重大な問題が起きていたことがわかったという。

「心臓の太い動脈が詰まり、心筋細胞の壊死を招く心筋梗塞寸前の状態の人が多数見つかり、冠動脈の中へカテーテル(細い管)を挿し入れて、ステント(金属の筒)などで狭窄(きょうさく)箇所を広げる必要のある人が15%もいたのです。中には、心臓の太い動脈がすべて詰まりかけており、足の静脈で代用する緊急手術を行った人もいました」

 がん検診については自治体などが実施している、肺がんのためのX線検査、肝臓やすい臓がんのためのエコー検査がある。しかし、牧田院長はそれではダメだという。

「CT検査はミリ単位の精度がありますが、エコー検査は検査する人の技術にバラつきがある。事実、私の父は医師で毎年エコー検査を受けていましたが、胆のうがんで亡くなりました。見つかったときは手の施しようがないほど浸潤・転移が進んでいたのです。父も亡くなる直前、“CT検査を受けるべきだった……”と悔やんでいました。だからこそ、私の患者さんには定期的な最新検査が必要だと考えているのです」

 糖尿病治療は血糖コントロールと目と腎臓の検査で十分というのは時代遅れなのだ。

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