病気になりたくなければ怒りを手放せ

人は怒ると「がん」「心臓病」「糖尿病」にかかりやすくなる

 人間の感情は「喜怒哀楽」と表現されますが、このうち最も毒性の高い感情は「怒」です。

「喜」と「楽」に伴う笑顔には、ストレス解消効果や免疫機能をアップして抗がん効果も期待できるなど素晴らしいことだらけです。「哀」には悲しみや鬱といったネガティブ感情は伴うものの、その時に流す涙にはストレスを解毒し、心をスッキリさせる良い効果もあったりします。

 しかし、「怒」には体に良いところがひとつもありません! 怒るとアドレナリンが分泌されるため、血管がギュッと締まって血圧が上昇し、心拍数が増えて心臓に大きな負担がかかります。だから、しょっちゅう怒っている人は不整脈や狭心症といった心臓病にかかりやすくなります。さらに、全身の筋肉が硬直するので、頭痛、肩こり、めまいといった体調不良の原因にもなります。

 また、怒りが長引くと「コルチゾール」というストレスに対抗するホルモンが分泌され、血糖値を上げて免疫力を下げてしまいます。そのため、怒りが長引けば長引くほど糖尿病やがんが発症しやすくなるのです。

 怒りには、ライバルに対する闘争心や自らを鼓舞する原動力を生むというメリットもあります。でも、それは自分の健康と引き換えにする“もろ刃の剣的メリット”です。そもそも、自分の嫌いなヤツや腹の立つ物事に、大切な健康を犠牲にするなんてナンセンスだと思いませんか?

 しかも「怒り」に伴う多大な生体エネルギーを投入するなんてもったいないこと極まりなし! と、頭では分かっていても、ついつい怒ってしまうのが人間。かくいう私もそのひとりです……。

 そこで、次回からは「いかに怒りを上手に手放すか」についてのアイデアを精神科医の立場から紹介していきます。

◇奥田弘美(おくだ・ひろみ) 精神科医。日本医師会指定産業医。山口大学医学部卒。都内20カ所の企業でビジネスパーソンの心身のケアを行いながら、「銀座スキンクリニック」ではコーチング・カウンセリングも行う。著書多数。5月には新著「女医が教える 働く男の怒りと疲れをパワーに変える処方箋」(メディカルトリビューン)を発売。

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