朝食抜きは基本のキ 中高年の健康は「1日1食」

食べ過ぎ禁物/(C)日刊ゲンダイ
食べ過ぎ禁物/(C)日刊ゲンダイ

 健康の大原則は「1日3食」といわれる。しかし、食べても体を動かさなくなる中高年にとって3食は食べすぎで、1日1食で十分だという。「ナグモクリニック」の南雲吉則総院長に詳しく聞いた。

 南雲医師は20年前、38歳の頃から「1日1食」、それも朝食を抜く健康法を実践している。当時は体重が80キロ近くあり、不整脈が持病だった。このままでは死期が早まると一念発起し、カロリー制限を試してみたが、カロリー計算は手間がかかり3日で断念。そこで1回の食事を<ご飯>と<味噌汁><おかず>の3品に絞る一汁一菜によってカロリー制限に成功した。だが、社会人ともなれば、食事会でたくさん食べたり、飲酒する機会は避けられないため、一汁一菜も難しい。行き着いたのが「1日1食」の食事法だった。

 昼食をとると眠くなって、午後の仕事効率が低下する。外科医で手術も行わなければならない医師にとって眠気は致命的。夜はどうしても食事会や飲み会の機会が多い。朝は胃がもたれるために「朝食抜き」を実践したところ、いまでは体重20キロ減、脳年齢38歳、骨年齢28歳、血管年齢26歳になったというから驚きだ。

「人間の体は食事の適量を教えてくれます。お腹がグーッと鳴ったら食事をとれば十分なのです。朝、起きてから空腹を感じるまで食事をとらずに脂肪を燃焼させることが健康への第一歩。朝だからといって無理に食事をしなくてもいい。私はガムを噛むだけで済ませています。朝は水分を摂取するのがいいともいわれていますが、ガムを噛めば唾液が出るので、無理に水を飲む必要もありません」

■無理して食べる必要はない

 たしかに、飲み会の翌日は胃がもたれ、食欲も湧かない。そんな時、無理して朝食をとる必要はないのだ。

 いまでは当たり前になっている「1日3食」という習慣が登場したのは、明治時代。富国強兵策で強い軍人をつくるため、栄養状態の悪かった当時の日本人に推奨されたものだ。しかし、戦後の高度経済成長期になると、それが過食へつながっていく。半世紀以上経ち、栄養過多となった現代、「1日3食」の習慣は見直されるべき時期に来ているという。

「病人、老人、妊婦、育ち盛りの子供は栄養が足りないので、しっかり1日3食をとる必要があります。しかし、暴飲暴食、喫煙が増える30代以降の男性、閉経後の50代女性はメタボになりやすく、栄養過多の人が多い。その状態で1日3食を実践しても、健康のためになっているとは言えません」

 それどころか、多すぎる内臓脂肪は心筋梗塞や脳梗塞の原因となる。健康のためには、余分な脂肪を一刻も早く燃焼させなくてはならない。

 体重60キロで体脂肪率30%の人は18キロの脂肪を抱えている。1日のエネルギーの必要量が1800キロカロリーだとすれば、朝食抜きどころか90日間、何も食べなくても生きられる計算になる。ボクサーなどのアスリートを見ても分かるように、体脂肪は1桁でいい。

 また、空腹は「サーチュイン遺伝子」を活性化し、細胞を若返らせることが科学的に証明されている。

「メタボだった人が、いきなり1日1食を実行するのは難しいにしても、暴飲暴食の翌朝や、食欲のない朝に朝食を抜くだけで体の調子は格段に良くなります。次第にだるさや疲れも抜け、気力・体力も充実してきます」

 朝食を抜くだけで、健康な体と良好なコンディションを手に入れられる。明日からでも実践してみたい。

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