フケのように体の皮がボロボロむける。それが乾癬(かんせん)だ。皮膚の新陳代謝のサイクルが通常の10倍速くなる原因不明の病気。遺伝的要因と環境要因が複雑に関係して発症する。患者数は10万人で、2対1で男性に多い。発症年齢のピークは、男性が50代、女性が20代。
乾癬には一見、無関係に思える症状が出てくることがある。医師も見逃してしまうことが多い。
Aさん(50代)は高校入学後、皮膚の湿疹に気付いた。近所の医院で脂漏性湿疹と診断。しかし症状は改善せず、ドクターショッピングの結果、2年後に乾癬と診断された。その頃、テニスをした後、いつまでも関節が痛くなることがあった。
以後10年間、関節が腫れたりこわばったり、雪の日には手がグローブのように腫れるということもあった。整形外科を受診しても、血液検査やレントゲンには異常が見当たらなかった。皮膚科で乾癬の皮膚症状の治療は受けていたが、関節については相談しなかった。
東京逓信病院の皮膚科で「関節炎が乾癬に関連したもの」と診断された時には、すでに50代。指の関節は変形しており、関節機能障害で曲がらなくなっていた。皮膚科部長の江藤隆史医師(東京逓信病院院長補佐)によれば、「乾癬は一般的に皮膚症状から出ますが、その後に関節症状が出ることがある」という。
乾癬は5つのタイプに分けられる。そのうち圧倒的多数を占めるのが「尋常性乾癬」。皮膚の表面にカサブタのようなものができ、鱗屑(りんせつ)と呼ばれるフケのようなものが大量発生する。体中のどこにでもできるが、四肢、体幹、頭によく見られる。
次に多いのが、関節炎を合併する「関節症性乾癬」。関節の痛み、腫れ、こわばりなどが出る。
「関節症性乾癬は、一般的には皮膚症状が先に出て、次に関節症状が出る。しかし、中には関節症状が先に出る患者もいます。皮膚症状が軽くて自覚がなく、関節症状の方が目立つ患者もいます。Aさんのように、皮膚症状に関節炎を伴う典型的な関節症性乾癬でも見逃されることが珍しくなく、関節炎が先に出た(ように見える)ケースでは、その傾向がより顕著です」
理由としては、(1)患者は乾癬で関節症状が表れることを知らないため、皮膚科に相談しない(2)皮膚科は乾癬で関節症状が起こる可能性を患者にあまり説明せず、定期的に関節の問診を行わない――などが挙げられる。
■対処が遅れると取り返しつかないことに
また、整形外科を受診する患者も多いが、整形外科の医師は、症状からリウマチを疑い検査。関節症性乾癬では、リウマチの場合に陽性になるリウマトイド因子が陰性なので、適切な治療につながりにくい。
「関節炎を放置すると関節の破壊が進み、関節が変形します。すると、元に戻らない。まれですが、関節の変形が急速に起こるケースもあります。だから、関節症状が出てきたら、早く治療を開始することが重要なのです」
2010年以降、生物学的製剤が保険承認され、難治性の尋常性乾癬や関節症性乾癬の治療に効果を挙げている。「打つ手」はあるのだ。私たち患者の側としては、「これはおかしい」と思ったら、すぐに医師に相談することが重要だ。
前出の通り、関節の痛み、腫れ、こわばりが特徴的な症状。乾癬の症状が出ている場所によっても、関節症性乾癬が出やすいかを予測できる。
「頭部、お尻、肛門周辺、爪に乾癬の病変がある人は、関節症性乾癬のリスクが高いです」
乾癬ですでに医師にかかっている人は、定期的に関節症状の問診をしてもらえるように主治医に言うのも手だ。