5割が該当 ひかない「足のむくみ」は静脈還流障害のサイン

 足のだるさが何日も続くようなら、静脈の流れが悪くなる「静脈還流障害(慢性静脈不全)」が原因かもしれない。

 重症化すると、足の皮膚に褐色の色素が沈着したり、皮膚が破れる皮膚潰瘍の原因になる。そうなると、完治は難しい。見極めのポイントと対策はどういうものか?

「予備群や軽症の人も含めると、日本人の40~50%が静脈還流障害に該当するとみられています」と言うのは、この疾患の治療を専門的に行う「お茶の水血管外科クリニック」(東京)の広川雅之院長だ。

 心臓から送り出された血液は「動脈」を通って体の隅々の毛細血管に運ばれ、「静脈」を通って心臓に戻される。
 この時、足は重力を受けているので、ふくらはぎの筋肉がポンプのように働いて、静脈を通る血液を力強く心臓に押し戻す。
 ところが、肥満、運動不足、同じ姿勢(立つ・座る)を長時間続ける--といった何らかの原因でふくらはぎの筋肉のポンプ機能が低下すると、足の静脈の血流が滞る。

「すると、静脈の圧が上昇する。さらに、加齢や遺伝で足の静脈弁の機能が低下しやすい場合、静脈の血液の逆流を十分に防げなくなる。結果、毛細血管から水分が漏れ出し、ふくらはぎや足首などがむくみます。これが静脈還流障害なのです」

■無頓着な男性が危険

 女性と比べ、男性はむくみに無頓着だ。ズボンだとふくらはぎが見えないので、そもそも気がつきにくい。知らないうちに、静脈還流障害を起こしているかもしれない。

「ふくらはぎや足首のむくみがあり、むくみに伴う足のだるさ、重さ、つっぱり感、痛み、熱感、かゆみなどがある場合は、静脈還流障害が疑われます。むくみは、すねを指で5秒以上押して、パッと指を離した後にくぼみが残るかどうかで判断するといいでしょう」

 静脈還流障害は、冬と夏に起こりやすい。

「冬は寒くて血行が悪くなる。夏は暑さで静脈の血管が広がり、血液が逆流しやすくなり、血液の中の水分が体内に漏れやすい」

 しかも夏は、暑くて運動不足に陥りがちで、ふくらはぎの筋肉のポンプ機能が働かなくなる。エアコンの効いた部屋で過ごし、冷たい飲み物や食べ物、特にビールなどと一緒に塩辛いつまみを食べていれば、体が冷えて冬と同じようになり、体の水分バランスが崩れる。

 むくみの段階で手を打っていればいいが、静脈還流障害が進行すると、下肢にこぶができる下肢静脈瘤や、心筋梗塞の恐れもある静脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)などを起こし、重症化すれば足の色素沈着、潰瘍などに至る。
 そこまでいかなくても、何より、足のだるさ、つらさがひどければ、当然、日常生活に影響が出てくる。

「治療は、マッサージや足首の運動、弾性ストッキングの着用、薬物療法、レーザー治療、ラジオ波治療などがあります。最近は、足のむくみを改善する内服薬が市販薬として登場しました。進行するほど、治療が大掛かりになってきますし、治らない場合もある。早期対策が肝心です」

 気になる人は、チェックリストも参考に。

▼チェックリスト
・すねを指で5秒以上押した後 にくぼみが残る
・足がだるい、重い、つっぱる、 痛い
・長時間同じ姿勢で過ごすこと が多い
・運動をあまりしない
・肥満
※3個以上該当する人は病院へ

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