マー君も受けた「PRP治療」で椎間板ヘルニアがすぐ治る

マー君は2カ月で戦列復帰/(C)AP
マー君は2カ月で戦列復帰/(C)AP

 右肘靭帯の部分断裂で戦列を離脱することになったヤンキースの田中将大投手が受けたのが、PRP治療だ。トップアスリートが支持する治療法として米国では知られているが、日本での認知度はまだまだ。一体どういうものなのか? アスリートの治療も行う「TC関節機能センター」の寺尾友宏院長に聞いた。

 PRP治療は自己治癒力を高めて、通常のスピードより早く外傷を治す治療法だ。

「外傷を負った時、血小板はその外傷部分に集まって止血をします。さらに、成長因子を放出して傷ついた組織を修復し、新しい毛細血管を作るシグナルを出します。こういった血小板の働きを大いに活用したのがPRP治療です」

 まず、腕の静脈から30㏄の血液を採取し、血液の入った採血管を遠心分離機にかける。すると、赤血球などの大きな細胞は下に沈み、血小板をたくさん含んだ体液が上澄みとなる。赤血球部分を破棄して、上澄み部分を取り出し、濃縮する。
 次に外傷を負った部分に局所麻酔を打ち、先ほどの上澄み部分に、成長因子の放出をより促す塩化カルシウムを加えたものを注射する。すべての工程を終えるのにかかる時間は30分ほど(TC関節機能センターの場合)。

「上澄み部分を濃縮したものがPRPで、多血小板血漿といいます。血液から血小板を抽出した、いわゆる血小板の濃縮液。外傷を修復するのに重要な働きをする血小板を患部にプラスすることで、血小板が活性化し、修復機能が高まり、傷の治りが早くなるのです」

■リハビリは必須

 反応はすぐに起こる。

「成長因子が血小板から放出されて、細胞の代謝が高まります。傷の修復が進んでいる証しとして、同時に炎症反応も出てきます。これがPRP治療の唯一のネックで、外傷を負った時のようなズキズキした痛みが出てくる。その痛みは一般的に、注射を打ったその日から翌日くらいまで続きます」

 寺尾院長はあらかじめ「炎症反応が出る」と患者に伝えるというが、「想像していたより痛かった」と感想を述べる人も少なくない。

 PRP治療でよくある誤解が、「血液採取からPRPを注射で戻す、つまり血小板を活性化させるところまでやったら治療は終了」という点だ。

「確かに、血小板活性はPRP治療のカギではありますが、それさえやれば外傷が治るというのは大間違いです。あくまでも修復機能を高めるだけ。PRPを注射で戻した後は、運動刺激(リハビリ)を加えないとダメです。そうしないと筋肉や腱の再構成はできず、元のコンディションに戻せません」

 そればかりか、PRPを注射した部分が硬くなってしまい、かえって動かしづらくなるという。骨折した時、ギプスをはめたままでいると動かしづらくなるのと同様だ。

「PRP治療をやっていても、リハビリまで力を入れているところは多くありません。『PRP治療を過去に受けたが、よくならなかった』と言う方の話を聞くと大抵、リハビリまで行われていません」

 整形外科の領域でPRP治療が有効なのは、四十肩・五十肩、肩こり、腱鞘炎、椎間板ヘルニア、腰痛、変形性膝関節症、テニス肘・ゴルフ肘、肉離れ、半月板損傷、ランナー膝、靭帯損傷・ねんざ、アキレス腱損傷、足底筋膜炎など幅広い。ただし、健康保険は適用にならない。

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