胃がんや狭心症のサイン…「いつもの胸焼け」が命取りになる

市販薬でだましだまし…はダメ/(C)日刊ゲンダイ
市販薬でだましだまし…はダメ/(C)日刊ゲンダイ

 吉田孝雄さん(仮名・55歳)は半年ほど前から胸焼けがひどく、食欲が落ちた。仕事柄、酒席が多いので酒の飲み過ぎか、気の重い案件を仕事で抱えていることによるストレスか、そのどちらかだと考えていたが、心配した妻からせっつかれ病院を受診したところ、進行した胃がんが見つかった。もっと早く受診すべきだったと悔やんだが、時すでに遅しだった。

 胸焼けはよくある症状だ。「いつものこと」「そのうちよくなるだろう」などと考え、市販の胃薬を飲みながらも、積極的な手を打たない人が多い。しかし、吉田さんのように、それが最悪の結果につながることがある。胸焼けに潜む病気を、西崎クリニック・西崎統院長に聞いた。

「患者さんが胸焼けを訴えた場合、一般的に質問するのは(1)何歳か(2)いつ頃から始まったか(3)どういう時に胸焼けが起こるか(4)どういう食生活をしているか(5)どういう持病があるか――の項目です。胸焼けで多いのは、胃液が逆流して食道の粘膜を刺激する胃食道逆流症(逆流性食道炎)です。若い頃からアルコールをよく飲み、肉類や脂っこいものが好き。どんぶりをかっこむなど早食いで、暴飲暴食をすることも多い。夜遅くに食事をしたりする。そんな場合は、真っ先に疑います」

 特に「早食い」はキーワードになる。ボリュームのある食事が一時に食道を通るので、広がりやすく、収縮力が弱まり、胃液が逆流する。

「50歳を越えている、肥満や大食い、または逆にやせ過ぎといった人には、まず食道裂孔ヘルニアを考えます。横隔膜には食道が通る穴があり、それが食道裂孔です。食べたものが通る時以外は食道裂孔で食道を締め付けています。それがゆるんで胃の一部が飛び出したのが食道裂孔ヘルニア。加齢とともに起こりやすくなりますし、先に挙げたタイプの人は常に圧がかかっているので、食道の締め付けがゆるくなりがちなのです」

■心筋梗塞の自覚症状の場合も

 ストレスが強い、胸焼けとともに胃の痛みもしょっちゅう感じるといった場合は、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍の可能性を思い浮かべる。

「慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍の場合、ピロリ菌の検査も必要です。胃がんの発症に関係しているので、ピロリ菌がいることがわかったら、除菌治療を受けるべきです」

 胸焼けが数週間を越えても続いている。その程度が強くなっている。食欲もなく、胃痛もある……。もしそうなら、胃がんをはじめとする消化器系のがんかもしれない。
 ほかにも狭心症や心筋梗塞の自覚症状として胸焼けが出てくることがある。胸痛がない人も少なくない。高齢者では、胸痛がたとえあっても気が付いていないこともある。

「胸焼けがよくあると訴えて来院した患者さんには、症状をよく聞いて、胃食道逆流症や食道裂孔ヘルニアなどが疑われたら、2週間ほど薬を飲んで様子を見ます」

 それでもよくならなければ、がんのリスクなども考え、上部消化管内視鏡をする。もちろん、狭心症など“心臓関連”が考えられる時は、心電図もチェックする。

「がんや狭心症など重大病が見つかることは、頻度としては多くありません。しかし、ゼロではない。“もっと早く検査していれば”とならないためにも胸焼けを甘く考えないで必ず一度は検査を」

 冒頭の吉田さんのようにならないために。

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