人気トレーナーが指南「やってはいけないマラソン常識」

スタート前は何もしない方がマシ/(C)日刊ゲンダイ
スタート前は何もしない方がマシ/(C)日刊ゲンダイ

「マラソン大会でスタート合図前にランナーのほとんどがストレッチをしていますが、間違った方法をしている人が大半。何もしない方がマシという人もいます」

 こう断言するのは、「マラソンで絶対にしてはいけない35のこと」(講談社)を出版したフィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一氏だ。3年先まで予約が埋まる人気トレーナーの中野氏に、マラソンスタート前やマラソン中によくやる「間違い」を聞いた。

【走る前にストレッチをする】

「一般的にみなさんがやっているストレッチは、前屈でももの裏やふくらはぎを伸ばしたり、股関節を広げたりする、筋肉を一定期間じっくりと伸ばすもの。走る前の筋肉や関節が十分に温まっていない段階で行うと、筋肉の線維が傷つき、ケガにつながる恐れがあるので、やらない方がいい」

 走り始めは、いつものスピードと比べてかなりゆっくりめで。体が温まってきたら、スピードを上げる。ストレッチをしなくても、これで十分だ。

【走る前にアキレス腱を伸ばす】

 そもそもアキレス腱は伸縮性がないので、伸ばそうと思っても伸びない。

「伸びているのは、ふくらはぎの筋肉です。前項と同様に、走る前にこれをやるとケガにつながりかねません」

【手首、足首を回す】

「手首、足首は複数の骨が組み合わさって構成されています。これをグリグリ回せば、複雑な構成物をグチャグチャにして、自分で調子を悪くするようなものです」

 足首周辺の準備運動なら、軽いジャンプがいい。

「筋肉が刺激を受けてほどよく縮み、反発性が出てスムーズに走る動作に入れます」

【シューズの紐をきつく締める】

「神経や血管が集まっている足の甲が圧迫されて、足がけいれんしやすくなります」

【“貯金”をする】

 タイムを“貯金”するために、いつもよりハイスピードで走り始めるのは、絶対に駄目だ。

「そうでなくても、マラソン大会時は、周囲につられてオーバーペースになりがちです。意識してペースを抑えないと、30キロ前後から一気に苦しくなり、最後の10キロで死ぬほどつらい思いをすることになります」

 マラソンのときは自分の能力に合った一定のペースで走るのがベスト。スピードの出し入れができるのは、トップランナーだけと肝に銘じるべし。

【ミネラルウオーターで水分補給】

「汗と一緒に電解質が体外に出ていくので、水分補給は必ずスポーツドリンクで。ミネラルウオーターのみでの水分補給では、血液の電解質のバランスが崩れ、脚がつったり、全身のしびれや脱力につながる可能性があります」

【脚がつった時に屈伸】

 再起不能でリタイアになることも……。

「筋肉は同じ長さの中で伸び縮みをしている方が負担が少ない。逆に、大きく伸ばしたり縮めたりすると、その次に動かす時に莫大なエネルギーが必要になります。マラソン大会では、30キロ付近を過ぎた辺りで脚をつりそうになるのですが、体が極限まで疲労しているので、屈伸によって力が入らなくなったり脱力してしまうことがあるのです。ふくらはぎやももの裏の軽めのストレッチを立ったままやるのが正しい対処法です」

 ランナーの経験値や体のつくりによって「OK」なこともあるが、ひとつでもリスクを減らした方が、楽しく走れ、成績も上がることは間違いない。

 覚えておこう。

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