子供の「歯の矯正」 受診前に確認すべき6つのポイント

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 前回、「不適切な矯正歯科治療」を受けている子供が非常に多いことを報告した。トラブルを避けるために知っておくべきことを、日本臨床矯正歯科医会・富永雪穂会長(アルファ矯正歯科クリニック院長)に聞いた。

「いつまで治療しても治らない」
「治療費がいくらかかるか分からない」
「噛み合わせがむしろ悪くなった」
「転医したいが治療費が返還されない」

 不適切な矯正歯科治療の“4大トラブル”だ。

 その背景には、一般歯科の経営状態悪化、そして「100%歯を抜かなくても歯を矯正できる」といった安易な喧伝と、「歯を抜きたくない」という患者心理への迎合があるという。

「矯正歯科治療は専門性の高い分野なので、歯科医には診断能力と治療技術が必要です。患者さんには正しい知識を持って医師選びをしてほしい」

 富永院長が挙げる受診時のチェックポイントは全部で6つ。特に重要なのは次の4つだ。

(1)頭部X線規格写真(セファロ)検査をしている

「世界中の矯正歯科専門医が必ず行う検査ですが、一般歯科医では、セファロそのものがないところが圧倒的に多い。必ず確認すべきです」

(2)精密検査を行い、それを分析診断した上で治療をしている

「これなしでは治療計画は立てられません」

 トラブルを抱える患者さんは、前に通っていた歯科医院での資料はもちろん、カルテすらないこともある。「歯を抜かなくても治せる」というクリニックでは、最初に方法ありきのため、精密検査を行わないのでは――というのは、考え過ぎだろうか。

■トラブルが起こってからでは遅い

(3)治療計画、治療費用について、治療前に詳細に説明をしている

 矯正歯科治療は自費診療で、それなりの金額がかかる。

「治療方針と費用は事前に話し、患者さん、医師双方が同意書にサインをして行うのが本来の形です。ところが、転医してきた患者さんに聞くと、『説明がなかった。“とりあえず”“その都度”と言われた』と答える人がかなりいるのです」

(4)治療中の転医やその際の治療費精算まで、治療前に説明をしている

「治療途中で引っ越す可能性もあります。費用先払いの場合、その時点までの治療費を精算して残りは返金し、引っ越し先近くの矯正歯科専門開業医を紹介し、診断資料を送ってくれる医師を探すべきです」

 慎重を期すなら、さらに2つのポイントをチェックしたい。

(5)常勤の矯正歯科医がいる
(6)専門知識がある衛生士、スタッフがいる

「非常勤では、突発的なトラブルに対応してもらいにくい。矯正歯科治療は一人の先生が一貫して診ることが大切ですが、非常勤ではそれが難しいこともあります。また、歯磨き指導ひとつとっても、一般の歯科治療とは違います。専門スタッフの方が有益でしょう」

 歯科の診療科目は自由標榜性なので、診療科目に「矯正歯科」と書いてあっても、矯正歯科専門ではないことが大いにある。信頼の置ける医師に出会うには、矯正歯科専門開業医を探すか、日本矯正歯科学会のホームページから認定医を見つける方法がおすすめだ。

「矯正歯科治療のトラブルの多くは不可逆性で、起きてからでは遅い。治療前に慎重に医師選びをしてください」

 近年は大人になってから矯正歯科治療を受ける人も増えているが、その場合も同じだ。

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