子供のメンタル不調 要注意サインは「朝起きられない」

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 子供が学校を休みがちになった――。それはもしかしたら、治療が必要なメンタル不調かもしれない。「なまけてる!」などと叱る前に、治療を考えたほうがいい。

 Aさんの息子(12)は、半年ほど前から学校に行かなくなった。朝もなかなか起きてこない。

 Aさんは最初「なまけ病」だと叱ったが、息子は学校に行こうとしない。いじめを疑うも、本人は否定し、周囲も「そうは思えない」と言う。いじめでなければ何が登校拒否の原因か? 考えても、答えが見つからない。

 Aさんが相談したのは、登校拒否の子供の患者も多いと知人から紹介された「新宿メンタルクリニック アイランドタワー」。検査と問診の結果、息子は「双極性障害(そううつ病)」と診断され、治療が始まった。2週間ほどで家族と一緒に朝食を取れるようになり、1カ月後には学校に通えるようになった。今では、登校拒否になったことが嘘のように、学校生活をエンジョイしている。同クリニックの川口佑院長が言う。

「子供のメンタル不調は、大人と違って非常に分かりにくい。つらさを言葉で表現できず、なぜ学校に行けないのかを本人もわかっていないからです。患者さんを診ていると、登校拒否のお子さんには、双極性障害が関係しているケースが多い。親が気付かなければ適切な治療につながらないのですが、そこが最も難しい問題点です」

■広まりつつある「磁気刺激治療」

 川口院長が挙げる要注意サインは、「朝起きられない」だ。

「双極性障害のうつ症状は、午後になるとエンジンがかかるが、午前中は調子が悪い。朝、起きないのではなく、起きられないのです。それが2週間以上続くようなら、双極性障害を疑ったほうがいいかもしれません」

 大人の双極性障害は、現在、薬物治療が第1選択だ。しかし子供は、向精神薬などを使った場合の長期的な脳の安全性は確保されておらず、医者の裁量に任されている。川口院長は、子供のリスクを考え、別の治療法を取り入れている。それが米国発祥の最新治療法で、国内でも大学病院などを中心に広まりつつある「磁気刺激治療(TMS)」だ。

「近年、前頭野の一部の機能が正常に働かなくなることと、うつ病や双極性障害との関係が明らかになってきました。TMSは、前頭野に磁気を当てて本来持っている脳の回復力を上げ、機能をもとに戻す治療法です。薬物のように脳に何らかの影響を与えることがないので、子供でも問題なく受けられる。パーキンソン病、認知症、脳梗塞後の麻痺の回復などにも使えないかという研究もされています」

 大人のデータになるが、同院の患者の86%が1年で改善し、58%が寛解。子供は大人より反応が早く、3分の1から3分の2のスピードで改善するという。健康保険適用ではないので、1回磁気を当てて6万円かかるのがネックか。子供の場合、ひとつの目安として10~20回当てることになる。

▼双極性障害とは

 双極性障害にはⅠ型とⅡ型があり、Ⅰ型は派手なそうの状態が長く続き、Ⅱ型は軽いそうが短い期間で治まる。Ⅰ型に対し、Ⅱ型のそうは周囲に分かりにくい。子供ならなおさらで、「統合失調症」などと誤診され、治療が行われているケースもあるという。

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