宣告後では手遅れ 「糖尿病」は発症前の生活改善で“自衛”せよ

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写真はイメージ/(C)日刊ゲンダイ

 糖尿病の3大合併症は、網膜症、腎症、神経障害だ。甘く考えていると、失明、人工透析、下肢切断など深刻な事態を招く。しかし、怖いのは3大合併症だけではない。糖尿病専門医である菅原医院(東京・練馬区)の菅原正弘院長は「ほかにも、心筋梗塞、脳梗塞、認知症、がん、うつ病、骨粗しょう症、歯周病などさまざまな病気のリスクを上げる。糖尿病患者は、そうでない人より“健康寿命”が10年くらい短い」と警告する。重要なのは発症前の対策だ。

「糖尿病は、発症してから何とかしようとするのでは遅い。発症前から手を打たなくてはなりません」

 食事をすると血糖値が上がる。これを下げる唯一のホルモンが、膵臓から分泌されるインスリンだ。

 肥満や運動不足などによりインスリンの働きが悪くなると、まず食後の血糖値が上がり始める。これが糖尿病の前段階。膵臓が元気なうちは、通常の何倍ものインスリンを作るので、血糖値の上昇は目立ったものではない。しかし、インスリンの量が非常に多い状態が続くと、動脈硬化だけでなく、アルツハイマー型認知症やがんの誘因になることがわかってきた。

「膵臓はすごく頑張る臓器で、一生懸命働いてインスリンを必要なだけ出そうとします。この期間は10年くらいあります。しかし、インスリンを作る細胞が過労死するため、徐々に膵臓が疲弊していき、糖尿病を発症する3年くらい前から分泌が減少していきます」

 個人差はあるものの、糖尿病の“スタート”は、血糖値が基準値を超える十数年前から始まっている。

 糖尿病を宣告された時には、膵臓の機能は正常時の2分の1ほどになっているのだ。

「細胞の数も半分ほどに減っているので、この時点から治療を始めても、これ以上悪くならないように維持するのがせいぜい。“治す”ことはほぼ不可能です。そして、血糖値を高いままにしておくと、さらに機能は低下していきます」

■初期段階の生活改善は“ゆるゆる”でいい

 重要なのは、初期の段階で生活改善に取り組むこと。ほとんどの人が薬を飲む必要はなく、合併症の発症を防げるという。

「空腹時血糖値が100mg/dlを超えたら要注意です。高血圧、脂質異常、肥満、家族歴などがあれば、それ以下でも境界型になっていることも少なくありません」

「100未満」は正常値とされているので、医師などから特別な注意を受けないだろう。“自衛”するしかないのだ。

 ただし、ご安心を。この段階での生活改善は、“ゆるゆる”でいい。

「基本は運動を取り入れ、食事の摂取カロリーを減らす。よくいわれることではありますが、これなしには糖尿病を逃れられません。ただ、“チリも積もれば山となる”を目指し、できることからやるといい」

 1日で240キロカロリーだけマイナスにすれば、だいたい1カ月で体重が1キロほど落ちる。3食に分ければ、80キロカロリー。ご飯やおかずをちょこちょこ残せば、1食80キロカロリー近くは無理せず落とせるだろう。仮に、30分の速歩を併用すれば、マイナスするのは半分の120キロカロリーでいい。より楽に実行できる。

 運動も「運動」と考えず、電車の中で立つ、階段を使うなど、自分ができる“ちょっとしたこと”を取り入れる。

「制約」が少ないうちに対策を講じた方が、結果的には楽だ。

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