患者に聞け

【中心性網膜炎】失明することはほとんどない

原因はまだよくわからない
原因はまだよくわからない(C)日刊ゲンダイ

 大手新聞社から教育事業関係の企業に転職してほぼ10年を迎える富永康生さん(仮名、55歳)は近視で、眼鏡歴40年。中学3年生のとき、黒板の文字が読みにくくなって近視と分かり、以来、眼鏡使用になった。

「これまで3、4年に1回、近視の進み具合に応じて度を強くするレンズの交換をしてきました。交換後、眼鏡をかけて検査するといつも0.8程度の視力。運転免許証更新の視力検査では、まあスレスレで通過していました」

 視力の異常に気が付いたのは昨年の秋ごろから。通勤途中に車内から外を見ても、黒い影が見えたり、ゆがんだようにも見える。とくに右目で頻繁におきていた。

「夏でもないのに、目の周辺が汗でもかいたように眼鏡が少し曇ってしまう。でも痛みはないし、仕事に支障が出るほどでもない。それで半年ほどほったらかしにしておきました」

 しかし、今年の4月に入って、勤務先の上司が「網膜剥離」の手術をした。

「それがきっかけで目の病気に関心を持つようになりました。実際、その上司が飲みながらさんざん脅すわけです。物が見えにくいというと“その症状は手術前の私と似ている。多分、同じ網膜剥離じゃないか? 治療が遅れると失明するよ”と。あまり気乗りしませんでしたが、自宅から歩いて行ける総合病院の眼科で、診察を受けてみたんです」

 眼底検査は、フルオレセイン(蛍光色素の一種)という造影剤を用いた「蛍光眼底造影検査」。腕の静脈から蛍光色素を注射し、眼底写真を撮るもので、もし色素上皮が裂けていたら、そこから蛍光色素が漏れてくる。

 結果、担当医からこう診断されたという。

「網膜剥離の心配はありませんが、中年の男性に多い『中心性網膜炎』という病気です。正確には『中心性漿液性脈絡網膜症』というそうですが、『この病気で失明することはほとんどない』ということで少し安心しました。ただ原因はまだよくわからないそうなんです」

 働き盛りの30~50代の男性に多く発症する「中心性網膜炎」とは、次のような病気だ。

 カメラのフィルムのような役割を果たす網膜の中で、最も視力に関係があるのが中心の黄斑部。この網膜の外側にある脈絡膜の間に、色素上皮細胞層という水を通さない膜がある。

 理由はまだ不明とされるが、この脈絡膜に小さな裂け目ができて水分がここを通り、網膜の下にたまってしまう。

 なぜ、脈絡膜が裂けて、目にこのような水漏れができるのかは、まだ分かっていない。おそらく疲労やストレス、あるいは緊張感などが誘因でないかと、考えられているのだ。

「この病気の治療にはレーザー光線を使うこともあるそうです。でも、私の場合はしませんでした。ストレスの解消努力で自然に治ることがあるそうですから。まあ、再発もあるけど、定期的な検査をして少し様子を見ましょうと言われています」

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