渡哲也も…「急性心筋梗塞」は生真面目&飲めるクチほど危険

決して人ごとではない
決して人ごとではない(C)日刊ゲンダイ

 団長は、度重なる重病にも負けなかった。91年に直腸がんで人工肛門を使用していることを告白した俳優・渡哲也(73)が先月10日、急性心筋梗塞で入院。カテーテル手術を受けていたという。すでに退院し、自宅でリハビリを続けているのが何よりだが、この病気、「急性」とついているのがポイントで、決して人ごとではない。東京医大病院循環器内科兼任教授・桑島巌氏に聞いた。

「心筋梗塞は、結果として心臓に酸素と栄養素を送る冠動脈が詰まり、心筋が壊死する病気です。『急性』がつくタイプは発症直前まで冠動脈の血流が十分保たれているので、いわゆる狭心症のような強い胸の痛みや息切れを感じたことのない人がほとんど。心筋梗塞全体のうち、狭心症がないケースが7割という報告もあり、健康診断で、血圧や脂質などの数値が少し悪い程度の“グレーゾーン”で発症するケースが少なくないのです」

「急性」の反対は「慢性」で、一般的な心筋梗塞は両方を含むケースと、「慢性」のみの場合がある。何が「急性」「慢性」を分けるかというと、血流が遮断されるまでのスピード。血栓が何年もかけてじわじわ大きくなって、やがて冠動脈をふさぐのが慢性。発症するまでは異常なかった血栓が突然大きくなってあっという間に冠動脈をふさぐのが急性だ。

 だから、「急性」は発症するまで症状が表れにくい。渡も突然の胸の痛みに驚いてすぐ受診。発症から間もなく治療を受けられたのが幸いし、九死に一生を得た。では、「急性」は、どんなことがキッカケになるのか。

「たとえば、夜遅くまでプレゼン資料を準備し、寝不足で出社。資料の最終確認を行ってから、いざ発表の場に臨み、終わったら、みんなで疲れをねぎらおうと、飲み会へ……。そんな生活が急性心筋梗塞を引き起こすキッカケになります。検査数値がクロとは言い切れない状態でも、こういうことがあると、特に血圧が急上昇します。それがよくないのです」

 仕事の「ストレス」は、重要な仕事を任された場合だけでなく、上司とのトラブルや左遷などもある。私生活では、不幸や離婚もつらい。そういう「緊張状態」は交感神経を高ぶらせ、「血圧」を上げる。「睡眠不足」も血圧を上昇させ、「喫煙」「暴飲暴食」もよくない。たとえば、仕事にマジメで、遊びもシッカリ、仕事の疲れは飲みながら発散するようなタイプが危ない。

 一つ一つのリスクは大したことがなくても、ストレスや怒り、悲しみなどのはけ口として、ある時、そのうちのいくつかが重なると、血圧がホップステップで上昇。いつものベースラインより高くなるから危ないのだが、ちょっとした運動が引き金になることもあるという。

「電車やバスへの駆け込み乗車、孫や子供の運動会に参加して走ったときです。何げない運動ですが、睡眠不足や仕事のイライラがベースにあると、リスクが重なり、大したことない運動でも血圧にとってはトドメになるケースがあります」

 血圧の急上昇で、血管の内側にある“血栓の卵”に傷がつくと、その傷口をふさごうと“カサブタの材料”が集まって大きな血栓ができて、血流を遮断する。

 その“血栓の卵”は、コレステロールでできている。急性心筋梗塞を免れるには、日頃の食生活に注意しながら、とにかくリスクを重ねないことだ。

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