どうなる! 日本の医療

成田市が医療特区に入ったのはなぜ

 アベノミクスの成長戦略のひとつである医療。内視鏡や画像診断装置といった日本が得意な医療機器や薬の分野の自主開発を進め、新興国などで使ってもらい世界中に販売する――。これが、政府が描く医療戦略だ。そのためには世界中から外国人医師を呼び寄せ、日本製の先進機器や薬に慣れ親しんでもらうことが不可欠。その施設としてうってつけなのが千葉県成田市が進める新設医大だ。

 昨年6月、成田市は国家戦略特区の医療特区「東京圏」として指定された。国際的な医療人材確保、医師不足解消、プラス数百億円規模の地域経済発展という目的を掲げ、定員1学年120人の医大と600床の医大付属病院建設構想が進行中。市は今年4月から新たに国家戦略特区推進課を設置、強力に誘致を進めている。

「昨年末から区域会議が4回、分科会が3回開かれましたが、最終的な結論は出ていません。今夏中には次の大きなステップがあると期待しています」(推進課担当者)

 昨年の政府の関連会議では「検討し結論を得る」と記され、その後の記者会見で国家戦略特区の石破茂特命担当大臣も「医師不足も国際化も十分理解した。その意味で早く結論を出すという意味で“結論を出す”と記した」と発言している。

 日本医師会、全国医学部長会議、地元医師会は「この先、人口減少が見込まれる一方で、医師の数は07年からの医学部定員増により、15医学部新設と同じ効果が出ている。新設大学は国際性を強調するが、従来の医大との違いも不明瞭」などの理由で反対しているが、関係者の間では成田市の医大新設は既定路線とささやかれている。それにしても、なぜ、成田市なのか。

「財政力です。他に医師数が足りないエリアもあるがそこが違う。空港からの税収もあり年間の歳入総額は650億円。財政力指数で見れば、10万人以上の都市の中で全国4位の豊かさです」(霞が関関係者)

 既に新設医大の最有力候補といわれる国際医療福祉大学は、来年4月開学予定の看護学部のため、京成線「公津の杜」駅前約1万2800平方メートルにキャンパスを建設中。この土地も成田市が京成電鉄から20億円で買収、大学に無償貸与した。9階建ての建物は、65億円の建設費のうち30億円を成田市が出す予定になっている。

 実際に医学部と病院を新設すると一般的に400億~500億円かかるとされるが、市は誘致に前のめりだ。果たして思惑通りの結果が出せるのか。

村吉健

村吉健

地方紙新聞社記者を経てフリーに転身。取材を通じて永田町・霞が関に厚い人脈を築く。当初は主に政治分野の取材が多かったが歴代厚労相取材などを経て、医療分野にも造詣を深める。医療では個々の病気治療法や病院取材も数多く執筆しているが、それ以上に今の現代日本の医療制度問題や医療システム内の問題点などにも鋭く切り込む。現在、夕刊紙、週刊誌、月刊誌などで活躍中。