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NY大付属病院が元消防士男性の「顔の全面移植手術」に成功

「男性の顔の全面的な移植手術に成功した」

 今月、ニューヨーク大学付属のランゴン・メディカルセンターが発表し、医学の大きな快挙として注目が集まっています。

 手術を受けたのは元消防士パトリック・ハーディソンさん(41)。2001年、消火中に落下してきた燃え盛る屋根の下敷きとなり、重傷を負いました。

 頭、顔、首のすべてにやけどを負っただけでなく、まぶた、耳、唇、鼻のほとんどを失い、その後、皮膚の移植など70回もの手術を受けましたが、目を閉じることもできず、食べたり話したりするのに非常な痛みを感じる毎日が続いていたといいます。

 彼に顔の移植手術を施したのはランゴン・メディカルセンター形成外科のエドワルド・ロドリゲス医師です。これまでの顔の移植手術といえば、ドナーからの鼻、皮膚、唇といった部分をそれぞれ縫って付けるものがほとんど。しかし、今回はドナーの顔から両耳、さらに頭全体を、まるでフードのように患者にかぶせるという画期的なものでした。これまで知られている症例はわずか数例しかなく、そのひとつは、同じロドリゲス医師が執刀した12年の移植手術です。

 今回、100人もの医師により26時間にわたる手術が行われました。移植手術で最も重要なのはドナーとのマッチングで、宝くじに当たるのと同じくらい低い確率といわれます。今回のドナーは、血液型や体格、年齢や肌の色などがパトリックさんと適合し、手術後の拒絶反応もなく経過も順調とのこと。

 近年、こうした顔の移植手術は医療テクノロジーとともに急ピッチで進化しており、アメリカ軍が研究資金を提供するなど、さらなる発展が期待されています。

▽シェリーめぐみ ジャーナリスト、テレビ・ラジオディレクター。横浜育ち。早稲田大学政経学部卒業後、1991年からニューヨーク在住。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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