実は眼精疲労? 目の表面乾く「偽ドライアイ」が急増中

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 ドライアイが増えているといわれるが、日本眼光学学会理事で梶田眼科(東京・芝浦)院長の梶田雅義氏は「それは本当にドライアイでしょうか?」と疑問を投げかける。話を聞いた。

「ある眼科医は『患者の8割はドライアイ』と言う。しかし、私は2003年の開院以来、延べで年間1万人近い患者さんを診ていますが、薬を使ったドライアイの治療が必要と判断する人は年間3人いるかいないかです」

 では、その多くは何が原因か? 梶田院長は眼精疲労だと話す。

「軽い眼精疲労では目の表面が乾くため、ドライアイと診断されてしまう。ところが、眼精疲労によるドライアイは一時的な症状なのです」

 眼精疲労が進むと、今度は涙がボロボロ出るようになる。ドライアイの症状として「まぶしくて涙が出る」というものがあるが、実は眼精疲労が進行したことによる涙の疑いがある。

 梶田眼科の患者の中には、他院でドライアイの治療「涙点プラグ(涙の流出口に栓を差し込む)」を受けていて、「涙が止まらない。涙点プラグを抜いてほしい」と訴える“実は眼精疲労”というケースも少なくない。

 眼精疲労は、「調節機能」と「眼位異常」を調べる2つの検査なしでは正確に診断できない。眼精疲労の原因は、「毛様体筋の疲労でピント調節がうまくできないこと」と、「眼位の異常」の2つだからだ。眼位とは、ぼーっと両目で遠くを見た時の目の向き。まっすぐの人もいれば、外側、内側、上下を向いている人もいる。

「眼位が外側を向いていると、近くを見る時に中心部分に寄せなくてはなりません。眼筋に負担がかかり、眼精疲労を起こしやすくなるのです」

■「視力がいい」が不調招く

 かつては、遠くを見られることが「よし」とされてきた。

 しかし、パソコン利用が一般的になり「見たい場所」は目から70~75センチ程度、次にノートパソコン普及で50センチ程度、そしてスマホを日常的に見るようになったいまは20~30センチ程度になった。時代の変化とともに、「見たい場所」への距離が縮まっている。

「つまり、これまでは視力がいいとされてきた人、眼位が外側を向いている人が、より眼精疲労を起こしやすくなってきているのです」

 遠くが見えない近視は眼鏡やコンタクトレンズで矯正の対象になるが、現代社会では、視力が2.0や1.5といった人も「遠視」として矯正をすべきなのだ。

 しかし、それがなされていない。だから眼精疲労が増え、ドライアイと誤診されている。そのため、眼精疲労を原因とする頭痛、首や肩の凝り、さらにひどくなれば、吐き気、めまい、慢性疲労などを招いているのだ。

「調節機能と眼位異常の検査結果から眼精疲労が判明したら、症状を和らげる点眼薬の処方とともに、『見たい場所』を快適に見られるように、眼鏡やコンタクトレンズでの矯正を行います」

 前述の通り、たいていはスマホなどを日常的に使っている人がほとんどなので、目から20~30センチの手元を快適に見られるようにする。近視ですでに眼鏡やコンタクトレンズを用いている人も含め、「見えすぎ」になっているケースが珍しくない。老眼を認識できていない人もいる。

「以前、私がテレビ番組で、ある難病を紹介したところ、全国から123人の問い合わせがありました。しかし検査をすると、37%は老眼を適切に対処していないための眼精疲労でした。難病を疑うほど悩んでいた不調が、適切な矯正で改善しました」

 重要なのは、眼精疲労を正しく診断し、治療をしてくれる医師に出会うことだ。

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