さらば栄養ドリンク 「疲労回復」は3つのコツだけで十分

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潜在披露をチェックしてみよう(C)日刊ゲンダイ

 厚労省の調べによると、働く人の7割が慢性的に「疲れ」を感じているという。それでも、これといった回復方法がなく、疲れた体にムチ打って毎朝通勤電車に揺られている人が大多数だろう。そうした状況に対し、「疲労のメカニズムを正しく知るべき」と説くのは大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授の梶本修身医師(写真)。そうすれば「疲労を回復でき、予防もできる」という。詳しく聞いた。

「肉体労働や運動をした後は“体が疲れた”と感じますが、これは錯覚です。ゴルフ程度では筋肉に大きな負担はかかりません。疲れたと感じるのは脈拍や呼吸、体温をつかさどる自律神経が運動によって疲弊するから。脳に勘違いさせ、それ以上体を動かさないように仕向けているのです」

 つまり、自律神経を整えれば疲労は回復する。梶本医師は国内で唯一、疲労医学を専門に研究する大阪市立大学大学院の特任教授で、慢性疲労専門の「東京疲労・睡眠クリニック」(東京・新橋)を営んでいる。そんな“疲労のスペシャリスト”が指摘するこうした疲労の仕組みについては、まだ知らない人がほとんどに違いない。

「十数年前まで、疲労に関しては科学的・医学的な取り組みがまったくなされておらず、医師ですら『なぜ疲労するのか?』を説明できない人が多いのです」

 だから、疲れた時には栄養ドリンクや焼き肉、うなぎといった精のつくものを取るという“迷信”がいまだにはびこっているのだ。

「戦前の食料不足の頃は体のエネルギー不足による疲れが深刻でしたが、今どきそうした疲労自体まず起きません。かえって脂質の多い食べ物を一気に食べることで胃に負担がかかり、疲れてしまうことが心配です」

 では、疲労回復には何を食べればいいのか。梶本医師は、「一番は鶏のムネ肉です。疲弊した自律神経を修復する『イミダペプチド』という物質が豊富に含まれているから」という。

 渡り鳥が長い距離を飛び続けられるのもイミダペプチドのおかげ。カツオやマグロの尾びれなどにも多く含まれる。目安は鶏ムネ肉で1日100グラム。日常的に摂取するのが重要だ。

 食事以外で疲労回復に効果的なのは「入浴」。ただし、熱い湯は逆効果だという。

「脳に快感物質が分泌され、疲れが薄れたように感じるだけだからです。せいぜい40度の湯に8分程度半身浴すれば、血行がよくなって疲れがとれます」

 疲労回復には「睡眠」も重要だが、質の良い睡眠の妨げになっているのがイビキ。イビキをかくと呼吸の労力が通常の10倍になる。

「イビキ防止にはうつぶせや横向きで就寝し、あおむけにならないことが第一です。意識的にはできないので、背中にガムテープでテニスボールを貼り付けておくなどすると、あおむけ寝を“予防”できます」

 疲労を回復するだけでなく、予防にも取り組みたい。梶本医師によると、ちょっとした3つのコツがあるという。

 1つ目は「サングラスを使う」こと。目に太陽光が入ると、紫外線から体を守ろうと自律神経が高進し、疲れを助長する。普段からサングラスをかけるといい。

 2つ目は「ゆらぎを作る」こと。自律神経は温度や光が一定でない方が疲れにくい。窓を開けたり、天井ファンを回したり、朝昼夕に散歩して違う質の日光を浴びると変化がつく。

 3つ目は「ながら作業する」こと。ひとつのことに集中しすぎると、脳の一部分だけが使われ、疲れやすくなる。ラジオを聴くなどしながら仕事したほうが、脳全体を使うので疲れにくい。その場合はトーク中心の番組がベターだという。

「やる気マンマンで疲れ知らずな人ほど過労死の確率が高い。そうならないよう、日頃から自分の疲労を客観的に捉えておくことが重要です」

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