全身の情報がぎっしり 「舌」は健康のバロメーター

形や大きさ、色で体の調子が判明
形や大きさ、色で体の調子が判明(C)日刊ゲンダイ

 身だしなみのために毎日鏡で顔を見ても、舌までじっくり見る人は少ないはず。だが、皮膚より薄い粘膜に覆われ、血管も多く集まる舌は身体情報の宝庫。舌を見れば、体の調子や病気のサインまで分かるという。

「チェックすべきポイントは、舌の形、大きさ、色、舌苔です」と言うのは、東京薬科大学付属社会医療研究所教授で、長春中医薬大学客員教授の猪越恭也氏だ。

 近年、西洋医学の現場でも導入され、注目度が高まっている中国伝統医学では、顔の観察を通して患者の健康状態を知ることが診察の基本になる。中でも、舌を診る「舌診」は重要だという。

「舌は粘膜が薄いうえ、血管が多く集まっているため、血液や体液の状態を知るにはうってつけの臓器といえます。つまり、健康のバロメーターなのです」

 自分でもある程度は観察できる。その際、注意すべきは、「食べ物や飲み物の色が付いていると正確な色が分からないので、必ず歯磨きやうがいをすること」と、「健康な舌との比較になるので、毎日継続的に観察すること」だ。

 そのうえで、チェックすべきポイントを紹介する。

■形・大きさ

 舌の周りが歯形で「凸凹」になっていたり、むくんで「大きく」「厚く」なったりしていたら、水分の調整をつかさどる胃腸や腎臓が弱っている証拠。逆に、舌が「薄く」「亀裂」が入っているような場合は水分不足の状態だ。

「年をとると体の水分が不足するため、舌も小さめになり、亀裂が生じやすい。しかし、若い人がこうした状態の舌だと、心身ともに疲労していることが考えられます」

■色

 健康な人の舌は基本的にきれいなピンク色をしている。しかし、「赤」みが濃い場合は、体に熱がこもっている状態だという。感染症などによる熱(実熱)は、舌の先端部分の赤みが特に濃くなる。体の衰弱などによる熱(虚熱)は、赤みに加え、苔が少ないか、ほとんどなくなる。

「白」っぽくなっているのは、血液が不足、つまり貧血傾向にある。体が冷えている時も血の巡りが悪くなるので同様だが、青みを帯びることもある。これは、血液中の酸素が不足するせいだ。

「紫」色は“血液ドロドロ”のシグナル。血液が老廃物で汚れていたりすると、血液の粘度が上がり、血行不良を引き起こして黒ずむからだ。

 よりはっきり出るのは舌裏の静脈で、血管が黒みを帯びて見える。

「こういう舌の持ち主は、慢性的な肩こりや腰痛に悩まされていることが多い。悪化すると血管が詰まり、静脈瘤など深刻な病気につながりかねないので注意が必要です」

■苔

 色と同じくらい重要なのが舌苔だ。舌の表面が見えないくらい「苔が厚い」場合は、胃腸に水分や不消化物がたまっている証拠。べっとりとして取れにくいものは「厚膩苔」、ボロボロと取れやすいのは「腐苔」というが、いずれも胃腸不良が原因だ。

 逆に苔が「薄い」あるいは、まったく「ない」のも問題。体液が不足がちで、抵抗力が落ちている可能性がある。また、アレルギー体質では、苔がまだらに抜ける「地図状舌」が見られることもある。

 風邪をひいて高熱が出ている時や、熱性の胃炎を起こしている時は、「苔が黄色」っぽくなる。黄色が濃いほど熱は高い。そうした状態が続いて体力が極端に落ちると、今度は「舌苔が黒」みを帯びてくる。

「黒っぽくなるのは非常に危険な状態です。すぐに最寄りの医療機関で診てもらってください」

 アナタの舌は、いまどんな状態だろうか。

関連記事