看護師直伝 がん治療と笑顔で付き合う

がん患者に「死にたい、楽にしてほしい」と言われたら…

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 終末期医療に関わっている医療者であれば、一度は患者さんから「もう死にたい、楽にしてほしい」と言われた経験があるはずです。残された時間が短いがん患者さんは、そのように思うことが多い。読者のみなさんは、こんな場面でどんな声を掛けますか?

 ①「縁起でもない、そんなふうに言うんじゃないよ」②「もっと楽しいことを考えようよ」③「『死にたい』なんてできないんだから、先生を困らせたら駄目だよ」④「……(何も言えない)」⑤「『もう死にたい、楽にしてほしい』って思ってるの?」――。

 私たち日本人は核家族化が進んだり、病院で亡くなる割合が高くなったため、身近な人を亡くす経験が少なくなりました。死に関する話題も当然のごとく避けてきたように思います。

 残された時間にかかわらず、がん患者さんのSOSは、「死にそうなくらい忙しい」といった日常の愚痴とは意味合いが大きく異なります。

 前回お話しした、不可逆的な身体変化が伴い、にっちもさっちもいかない状態。「もう終わりにしたい、生きている意味がない」と感じる「スピリチュアルペイン」が強い状態なのです。

 人は苦痛が強い時、他者に「それを分かってもらえた」「気にかけてもらえた」と感じられれば、まずは癒やされます。①~⑤のうち、死にたいくらいつらい気持ちや状況を分かってもらえたと思える声掛けはどれでしょうか。

 スピリチュアルペインを緩和する方法は複数ありますが、私は、患者さんの言葉をそのまま繰り返し(反復)、「あなたの苦痛は分かっているよ」と伝えます。つまり、⑤のような対応を心掛けています。