今年4月、東京都千代田区から千葉市に移り住んだAさんは、子供の医療費格差に愕然としたという。
千代田区時代は、所得制限なしで18歳まで無料だったが、千葉市で無料になるのは小学3年生まで。それ以降は中学3年生までは通院300円、入院500円の窓口負担金が必要で、高校入学以降の医療費補助はゼロだ。
日本の医療の地域格差は広がる一方で、住むエリアにより医療費の窓口負担は大きく変わる。本当にこれでいいのだろうか。立教大学コミュニティ福祉学部の芝田英昭教授が言う。
「本来、子供の医療費助成は国が行うべき筋のものです。ヨーロッパでは大半の国が医療費助成を行い、それも無料にしている国が多い。にもかかわらず、日本では国が地方自治体に医療費助成を押しつけているのは怠慢としか言いようがない」
しかも、国は医療費助成をしている地方自治体に対して、ペナルティーを科しているというから驚きだ。
「対象年齢のバラつきはありますが、多くの地方自治体は苦しい財政の中から、医療費助成制度を設置して子供の医療費ゼロを実施しています。ところが国は、そうした自治体に対し、国民健康保険国庫補助金減額というペナルティーを科しています」(芝田教授)
その総額は2013年度で114億9000万円にも上る。
国の考え方の根底には「自治体の窓口減免は、患者数を増やし医療費増につながる。助成実施の自治体と、そうでない自治体との公平性を図るため」がある。しかし、成長期にある子供の医療の充実は、将来の医療費抑制につながるのではないか。
こうした声に押される形で国もペナルティー廃止の方向を打ち出したが、現時点で細部は詰め切れていない。恐らくは「小学校入学時まで無料」とする地方自治体に対しての国民健康保険国庫補助金減額措置を撤廃することになるだろう。しかし、これで十分とはいえない。
「一部減額撤廃は評価できますが、子供は18歳程度までは心も体も不安定です。そこまで無料減額措置をしないと十分とはいえません」(芝田教授)
実際、独自の医療費助成制度で18歳まで医療費無料を行っている千代田区は、この動きをどう見ているのだろうか。
「子供医療費無償化は、いざという時に躊躇なく医療機関にかかれるために必要な措置です。また、早期発見・早期治療が子供の命を守る仕組みであるため、国保の公費負担減額調整措置の有無とは関係なく、区民の福祉向上のため実施しております」(千代田区)
ちなみに、千代田区の減免措置額は平成26年度で550万円に上るという。
どうなる! 日本の医療