医療数字のカラクリ

「ネット研修」に数万円をかける価値はあるのか?

(公式HP)

 今年4月から「かかりつけ薬剤師」制度が導入されましたが、違和感を感じています。患者さんの投薬・服薬指導をひとりの薬剤師が担当する――。薬の使い過ぎや飲み合わせの悪い薬を避けようとするのは大切なことです。

 しかし、これまでも薬剤師なら努力してきた事柄です。わざわざ「かかりつけ薬剤師」なんて必要ないと思います。

 百歩譲ってかかりつけ薬剤師が必要としても、それになるための条件もふに落ちません。実務経験が3年以上あり、いま勤めている薬局に6カ月以上在籍、1週間の勤務時間が32時間以上ある――。これにどんな意味があるのでしょうか? そうでない薬剤師は信用できない、いいかげんだ、とでもいいたいのでしょうか?

 もっとも不可解なのは、かかりつけ薬剤師になるための研修です。40単位の研修が必要とされていますが、「ネット研修」だけでもOKです。

「ネット研修」では動画を流しっぱなしにするだけで、ロクに画面を見ないまま受講が完了しないよう工夫が施されています。数分ごとに画面が途切れて、「次の学習へ」をクリックするような仕組みになっているのです。しかし、クリックするだけなら本人でなくてもいいわけです。やりようによっては、まともに画面を見なくてもいいことになります。「ネット研修」の最後には試験がありますが、これも単位取得には関係ないようです。

 これは何のための研修なのでしょう? 腹立たしいのは、こんな研修のために万単位のお金をかけなければならないことです。

 こうした薬局側の負担の見返りは「薬剤服用歴管理指導料」50点(500円)の代わりに、「かかりつけ薬剤師加算」70点(700円)がもらえるという形になります。つまり、薬局側は20点(200円)収入が増えることになります。

 結局、「かかりつけ薬剤師」制度は、研修会社を儲けさせるだけではないでしょうか?

(40代調剤薬局薬剤師)